今後の研究の推進方策 |
平成28, 29年度では、まず1,2-diastereo-inductionを利用した多官能基化鎖状分子の立体選択的合成の実現を目指す。複雑なアルカロイドの合成においてα-アミノ炭素ラジカル種の有用性は認識されてきたが、付加反応のジアステレオ選択性を鎖状で制御した例は稀である。求核性を有するα-アミノ炭素ラジカル種はα-炭素上置換基との立体反発を最小にするように(1st-1,2-diastereo-induction)エノンに付加すると予想される。その結果、生じたケトンα位のラジカルは、Et3Bと反応しエノラートを生じる。このエノラートの求電子剤(例えば、アルデヒドやケトン)による捕捉も、エノンβ位置換基との立体反発を最小にするように(2nd-1,2-diastereo-induction)進行する。様々なα-アミノ炭素ラジカルと多置換エノンおよび求電子剤を用いて、その反応性およびジアステレオ選択性を精査する。 続いて、不斉Lewis酸触媒を用いたC=CおよびC=N二重結合へのラジカル的不斉付加反応を実現する。現代の有機合成化学においても、ラジカル付加反応をエナンチオ選択的に進行させる事は極めて挑戦的な課題である。そこで我々はα-ヘテロ炭素ラジカルを求核剤、アクリロイルオキサゾリジノンまたはグリオキシリックオキシムを求電子剤として用い、二価金属Lewis酸触媒(例えばMgX2, CuX2, ZnX2)およびキラルなビスオキサゾリン(BOX)配位子存在下、炭素ラジカル種のエナンチオ選択的求核付加反応を検討する。まず、Lewis酸触媒とBOX配位子の最適化を行い、様々なα-ヘテロ炭素ラジカルと求電子剤を用いて、その反応性およびエナンチオ選択性を精査する。また3成分ラジカル-極性交差型反応へも本法を拡張し、ラジカル的不斉付加反応と引き続くジアステレオ選択的アルドール反応の実現を目指す。さらに、以上の反応を応用し、効率的な天然物合成への展開も推進する。
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