アカガエルは日本列島に広く分布しているが、両生類に致死的な効果をもたらすツボカビ菌に抵抗性である。本研究課題は、アカガエルの免疫系の進化学的特性を調べ、両生類の免疫系の進化を明らかにする。1)アカガエル及びその近縁種であるタゴガエル、ヤマアカガエルのそれぞれ1個体について成体の脾臓、皮膚、血液、及びオタマジャクシでの主要組織適合性抗原(MHC)やその他の免疫関連遺伝子群についてトラスクリプトームによリ、発現プロファイルを比較した。2)ツボカビ菌への抵抗性という観点から、アカガエルとタゴガエル、ヤマアカガエルの集団についてMHCの多型性を解析した。この解析の結果、MHC class Iの多型性については3種ともに他種のカエル集団と同程度に多様であり、組換え、平衡選択、最近の遺伝子重複と、MHCの多様性に関与するメカニズム全てが働いていることが確認された。さらにMHC class II については、ペプチド結合領域のアミノ酸配列から想定される機能的に類似していると推定されるスーパータイプを見出す解析を、ツボカビ菌への抵抗性や感受性がわかっているオーストラリア、アメリカ、韓国のカエルのMHC class II とともに行った。その結果ツボカビ菌抵抗性を示唆すると思われるスーパータイプが見つかった。また3種のトランスクリプトームの解析からは、発現している免疫関連遺伝子群は組織間のみならず、オタマジャクシと成体の間でも異なることが観察された。特に、MHC class II の皮膚での発現は、オタマジャクシの間には抑制されていて尾が短くなる頃から弱く発現されるようになる。一方、MHCclass I では変態が始まる以前に発現が観察された。この結果は、これまでにアフリカツメガエルで観察されていたパターンとは異なっていた。この結果については、今後qPCRを用いた検証が必要となる。
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