本年度は、プロトポルフィリンのプロピオン酸側鎖にプロピルジアミン、オクチルジアミン、あるいはビス(3-アミノープロピル)アミンを4つ導入したポリアミン修飾プロトポルフィリン分子を合成し、細胞内への導入と細胞内での局在や細胞に及ぼす影響について調べた。その過程で、合成したポリアミン修飾プロトポルフィリンが、光線力学療法(PDT)用剤としての高い効果を有することを見出した。光照射時における一重項酸素生成の量子収率をメタノール溶媒中で調べたところ、約6倍向上することが分かった。HEP3BおよびHT29腫瘍細胞に、ポリアミン修飾プロトポルフィリンを添加後、LED を用いた660nm の光照射により、in vitro の細胞実験にて光細胞毒性を評価した。HEP3B 細胞に光非照射時および光照射時のIC50値の比は、プロトポルフィリンと比べて、ポリアミン修飾プロトポルフィリンでは約40倍向上することが判明した。同様に、HT29細胞においても、ポリアミン修飾プロトポルフィリンでは約40倍向上した。ポリアミン修飾プロトポルフィリンの、高い水溶性をもつために、細胞内への効率的に取り込まれること、また、腫瘍細胞内のミトコンドリアに集積することを、蛍光顕微鏡観察により明らかにした。以上の特性により、ポリアミン修飾プロトポルフィリンが高い光細胞毒性を示すと考えられる。
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