研究課題
本研究では、実用上も重要な純チタン薄板のバルクナノメタル化とそれに伴う組織・力学特性の変化を基礎的に明らかにすることを目的とする実験的研究を行なった。の研究は順調に推移し、以下の研究成果を得ることができた。(1) 異なるFe量の4種類の純チタンは、ラメラ状α相(HCP構造)の間に薄いβ相(BCC構造;高温相)が残存した組織を有し、Fe量の増加とともにαラメラは微細化し、β量は増大した。β相中にはFeが濃化していることが明らかとなった。試料の強度はFe量の増加とともに増大した。(2) 加熱・冷却中の中性子その場回折により、α→β逆変態とβ→α変態の相変態点およびkineticsを測定することに成功した。(3) 室温で10回転のHPTによる巨大ひずみ加工を施すことにより、いずれの試料においても結晶粒径100 nm程度までの結晶粒超微細化に成功した。HPT材中には、チタンの高圧相であるω相が形成されており、ω相の体積率はHPT加工時の圧縮圧力が高いほど、またFe量が多いほど大きくなることが明らかとなった。(4) HPT材の強度はFe量の増加とともに増大した。Ti-1.0%FeのHPT材は1300 MPaに達する極めて高い引張強度を示したが、HPT加工まま材の引張延性は1~2%程度と総じて低かった。(5) HPT加工材に対して焼鈍を施すことにより、約0.7μm(700 nm)~数十μmの種々の平均粒径を有する完全再結晶組織を得ることに成功した。Fe量が増大するとともに、同じ焼鈍条件下でより微細な結晶粒組織が得られ、軟化曲線はFe量の増大とともに大きく遅滞した。(6) 完全再結晶化により延性が回復し、強度と延性を両立したバルクナノメタル材が得られた。強度はFe量の増加とともに増大し、例えばTi-1.0%Feの平均粒径0.73μm材は、引張強さ700 MPa、引張延性15%を示した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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IOP Conference Series: Materials Science and Engineering
巻: 194 ページ: 012020~012020
10.1088/1757-899X/194/1/012020
http://www.tsujilab.mtl.kyoto-u.ac.jp/01TsujiLab/index_j.html
http://www.ms.t.kyoto-u.ac.jp/ja/