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2016 年度 実績報告書

リーシュマニア寄生虫のヌクレオソーム構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 15F15729
研究機関早稲田大学

研究代表者

胡桃坂 仁志  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80300870)

研究分担者 DACHER MARIKO  早稲田大学, 理工学術院, 外国人特別研究員
研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワードリーシュマニア / クロマチン / ヌクレオソーム / ヒストン
研究実績の概要

平成28年度は、外国人特別研究員の出産・育児に伴い8月末をもって中断したため、4月から8月にかけて行った研究実績の概要について記す。マクロファージに感染したリーシュマニアは、自身のヒストンH3をマクロファージ内に放出するという報告をもとに行った前年度の研究において、ヒト培養細胞の核内にリーシュマニアのH3が局在することが分かった。さらに、試験管内においてリーシュマニアのH3は、ヒトのH4とH3-H4複合体を形成できることが明らかとなった。そこで、リーシュマニアのヒストンH3とヒトのヒストンH2A、H2BおよびH4からなるハイブリッド・ヌクレオソームの試験管内再構成を試みた。その結果、これらのヒストンタンパク質とDNAの複合体が得ることに成功した。次に、DNAフットプリント法により、この複合体がヌクレオソームであるかどうかの検証を行った。コントロールのヒトのヒストンのみを用いて再構成したヌクレオソームと同様に、得られたヒストン-DNA複合体中のDNAは10塩基対ごとに切断される周期性が確認された。本結果より、リーシュマニアのヒストンH3とヒトのヒストンH2A、H2BおよびH4からなるハイブリッド・ヌクレオソームを再構成することに成功したことが分かった。このハイブリッド・ヌクレオソームの熱安定性の解析を行った。解析の結果、ハイブリッド・ヌクレオソームはヒトのヌクレオソームより熱安定性が低いことが明らかとなった。また、ヌクレオソームを形成しているDNAの両端の運動性をヌクレアーゼの感受性により解析した結果、ハイブリッド・ヌクレオソームはヒトのヌクレオソームより感受性が低いことが明らかとなった。中断から復帰後は、ハイブリッド・ヌクレオソームの機能解析をさらに進めていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

リーシュマニアのヒストンH3とヒトのヒストンH2A、H2BおよびH4からなるハイブリッド・ヌクレオソームの試験管内再構成に成功した。さらに、生化学的解析により、このハイブリッド・ヌクレオソームはヒトのヌクレオソームとは異なる性質を示すことが明らかとなった。このことから、リーシュマニアのH3がマクロファージ内のクロマチンに取り込まれることにより、宿主のクロマチンの構造と機能が変化することが考えられ、リーシュマニアが感染した宿主細胞のクロマチンに自身のH3を取り込ませることで、転写などのクロマチンによって制御されている機構に影響を及ぼしている可能性が明らかとなった。この成果により、本研究はリーシュマニアが感染後に宿主細胞内に自身のH3を放出することの意義を探る上での重要な知見を与えることができ、当初の予定を上回る進展を得ることができた。

今後の研究の推進方策

リーシュマニアのH3がヒトのヒストンとともにハイブリッド・ヌクレオソームを形成することが明らかになっている。引き続き、ハイブリッド・ヌクレオソームの機能解析を行いつつ、X線結晶構造解析により立体構造の決定を行う。これらの生化学および構造生物学的解析に加え、以下の細胞生物学的解析も行う。ヒト培養細胞内に一過的にエピトープタグを付加したリーシュマニアH3を発現させ、クロマチン免疫沈降法により、リーシュマニアH3を含むヌクレオソームを回収する。その後に、回収したヌクレオソーム中に含まれるDNAの配列を、次世代シーケンサーを用いて解析し、リーシュマニアH3が取り込まれるゲノムDNA上の領域を同定する。得られたリーシュマニアH3の局在パターンとこれまでに明らかになっているエピジェネティクマークの局在パターンとの比較を行い、ハイブリッド・ヌクレオソームの形成が宿主細胞に及ぼす影響の解析を行う。

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公開日: 2018-01-16  

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