本研究は紀元前後から五世紀までのインド仏教僧院文化の研究である。いくつかの主張点がある。第一は、この時代の仏教修行者の日常生活における苦行の研究である。第二は、修行者の衣を得る方法に焦点を当てた研究である。第三は、古代インドの墓地における修行者のさまざまな修行である。本研究は、パーリ、サンスクリット、漢訳に残っている仏教資料を扱う。これらの諸資料からデータを抽出するために、文献学的のみならず、歴史的かつ人類学的な方法を用いている。本研究の成果として、次の出版物が含まれる。第一に、インド仏教僧院における苦行実践に関する、The Quotidian Asceticと題した本の原稿(250ページ)をオックスフォード大学出版(Oxford University Press)へ最近提出した。この原稿は現在査読されており、2017年6月までに最終版を出せると予想している。第二に、古代インドの僧院で修行者が衣を得る方法を調査し、2016年12月に『印度学仏教学研究』 65(1)で「律文献の人類学的分析による頭陀行の再検討と題した論文を発表した。第三に、衣の獲得方法にかんするさらに長い論文を“Pamsukulika as a Standard Practice in the Vinaya”と題して出版する予定である(現在、印刷中のRules of Engagementという一冊の中に収録)。古代インド僧院における苦行主義に焦点を当てた本研究には、まだ翻訳されていないサンスクリット、漢訳、パーリ語の文献の相当数を読解する必要があるために、著書を期間内に出版するには到らなかったが、全体として十分な成果を挙げることができたと考えている。
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