先行研究によれば、女性の政治的代表性を高める方法としてもっとも有効的なのがクォータ制度(候補者及び議席割当制度)である。しかし、日本では選挙における女性クォータが導入されていないにもかかわらず、地方議会においては、女性議員が着実に増えつづけている。本研究は、 クォータ制度以外に女性議員を増やすためにはどのような取り組みが存在するのかを、市民社会、または政党の選挙戦略に着目して明らかにする。そのため、研究期間初年度に女性議員がもっとも多い東京都議会を事例として、政党は女性議員を増やすためにどのような戦略を取り上げているのか、そして、その結果として選出された議員は女性の利益をどのように代弁しているのかを分析した。 本研究の主な研究成果は二つである。まず、2000年代以来東京都議会の会議録(本会議・委員会)を検討し、女性の利益に関する政策トピックは何か、誰が(議員性別・政党)このような政策トピックに言及するのかに関するデータを集めた。そのデータ分析を通し、男性議員より女性議員が、女性議員の中でも少数会派所属の議員らが(共産・公明・東京生活者ネット・無所属)特に女性の利益を代弁していることが明らかとなった。また、最も女性の利益に関する発言をしている議員ら5人とインタビューを行い、現在東京都議会の少数会派所属の女性議員らは、女性やマイノリティ(社会で声をあげられない人々)の意見を代弁するために政治家になり、議員になってからもその人々のために活躍していることがわかった。 本研究の意義は、まず、日本政治研究において、地方議会における女性の利益の内容とそれが議員の性別や所属政党によって異なることを明らかにした。さらに、女性と政治に関わる研究において、少数政党の女性候補者リクルート戦略に着目し、その少数政党の女性議員らが女性の利益を代弁するためにどのような活躍をしているのかを明確にした。
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