無機ナノシートに取り込まれた有機化合物には、有機化合物単体のときとは異なる特異的な光学物性を示すものがある。本研究では、無機ナノシートの層間に光学物性を示す有機化合物とは別の物質を共存させる事による層間環境をデザインすることにより、取り込まれた有機化合物の性質をチューニングできるようにすることを目指した。このことにより、有機物が持つ潜在的な特性を最大限発揮させ、優れた光学物性を持つ無機ナノシート-有機化合物ハイブリッド材料を創出するための礎を築くことを目的とした。 本年度は、無機ナノシートとして粘土鉱物を利用し、粘土鉱物の大きな特徴である膨潤/乾燥を利用することにより層間環境をスイッチングすることで、取り込まれた有機化合物の集合状態も連動してスイッチングさせる課題に取り組んだ。具体的には、優れた光学物性を示すJ会合状態と、無会合状態とを膨潤/乾燥によりリバーシブルにチューンする方法論を確立した。 また、無機ナノシートの層間には、有機化合物が無会合で、かつ高密度に取り込まれることが知られている。そこで、無機ナノシートの層間に有機ラジカルを取り込ませ。有機ラジカルが安定、かつ高密度に集積した集合体の実現を目指した基礎研究にも取り組んだ。粘土鉱物を無機ナノシートとして利用し、ウルスターブルーラジカルカチオンとのハイブリッド膜を作成することで、有機ラジカルが安定、かつ高密度に集積した集合体を得ることが出来た。有機ラジカルは、潜在的に優れた光学特性、特に非線形光学特性を示すとされている。本研究で導かれた成果は、今後、非線形光学材料としての展開が期待される。
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