研究課題/領域番号 |
15F15744
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三宮 工 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (60610152)
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研究分担者 |
WADELL CARL 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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キーワード | プラズモニクス / 電子顕微鏡 / カソードルミネセンス |
研究実績の概要 |
透過型電子顕微鏡(TEM)は、材料、生物、医療など応用分野から、基礎物理・化学の分野まで広く用いられている。近年では、サブオングストローム分解能を持つTEMが普及し、その場観察手法も可能となり、より多くの現象が解明され始めている。一方で、TEMでは高エネルギー電子線を用いるため、電子線による観察対象の損傷が無視できない。この電子線損傷は、TEM中その場観察時に大きな問題となる。すなわち、観察対象の変化が本質的なものか電子線損傷かを見分けられない。本研究では、プラズモニックセンシングを応用し、TEMにおける電子線の影響を定量的に解析することを目的としている。 電子線の影響として、まずは電子線による局所温度変化に注目した。局所的な温度を測定する、「ナノ温度センサー」として、金属微粒子を想定した。球に近い形状の金属微粒子は、基板との接触面積が少なく、基板への熱拡散が少ないことが期待される。 27年度下半期では、数種類の金属微粒子あるいは金属合金微粒子を作製し、局在プラズモン共鳴の温度依存性を測定した。定量的な温度測定を行うため、電子顕微鏡内と同等の高真空下で温度制御しながら光学測定が可能なシステムを構築した。これにより、センサーのカリブレーションが可能となった。真空チャンバ内へ投入後、一回目の温度上昇時には、吸着分子の脱離による共鳴シフトが観察されたが、このような付加逆な共鳴シフトは2回目以降の昇温時には測定されなかった。 また、走査型透過電子顕微鏡内で、カソードルミネセンスにより、これらの粒子がプラズモン発光し、スペクトル測定可能なことを確認した。自己組織化を用いた粒子作製では、特に合金粒子の場合、組成や形状が一定でなく、共鳴波長が不均一であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.センサー粒子の作製:平成27年度中に、自己組織化を用いた貴金属ナノ粒子(Au,Ag,Cu)の作製手法を確立した。ガラス(SiO2)上に真空蒸着により金属薄膜を堆積し、真空熱処理を施すことで、大面積で自己組織化したナノ粒子が作製できた。膜厚を調整することである程度粒子サイズの制御も可能であった。これは当初の計画通りである。さらには、純金属だけでなく、同時堆積により、合金ナノ粒子の作製にも成功している。結果的には、純金属ナノ粒子のセンサー感度はかなり低いことが確認されたので、センサー粒子の高感度化へむけて合金ナノ粒子の利用が期待される。 2.プラズモン発光の確認:走査型透過電子顕微鏡とカソードルミネセンスを組み合わせた測定法により、作製されたナノ粒子からのプラズモン発光を測定できた。ナノ粒子からのプラズモン発光は粒子サイズが小さくなると微弱であり、50nmかそれ以上のサイズが望ましいことも確認できた。これは当初の計画通りである。 3.センサー粒子の性能評価とカリブレーションシステムの構築:電子線照射下での温度測定のためには、金属ナノ粒子の共鳴波長を温度として変換するカリブレーション測定が必要である。27年度中に顕微鏡外でカリブレーションを行うシステムを構築できた。電子顕微鏡下と同等の高真空(10-4Pa程度)で、温度を精密制御しながら光学共鳴シフトを0.1nm分解能でその場測定する装置を作製した。これは当初の予定より半年ほど先行している。 4.電子顕微鏡内における光透過測定システムの構築:カソードルミネセンスによるプラズモン発光が微弱な際に透過光測定を可能とするため、また、電子顕微鏡内で光により試料加熱を行うために、電子顕微鏡内に光導入するシステムを構築している。27年度までに、当初の予定通り、電子顕微鏡とは独立して、光導入部システムの光学系をほぼくみ上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.センサー粒子の改良:これまで純金属のセンサー粒子を調査したが、合金粒子の方が感度がよさそうなことが分かってきている。しかし、組成を制御された合金微粒子の作製は、拡散を利用した自己組織化だけでは困難であるため、コロイダルリソグラフィーを用い、拡散領域を制限して合金ナノ粒子作製を行う予定である。合金ナノ粒子の設計には、熱膨張率と誘電率を考慮し、有限要素法とMMPによる電磁場シミュレーションを活用する。 2.その場測定:まずは微粒子の温度センシングをTEM中で実施する。Ex-situでのセンサーカリブレーションが可能になっているので、上記合金ナノ粒子センサーのカリブレーションデータを利用して、電子線の電流密度を変化させながら温度上昇を測定する。支持膜(あるいは基板)を変えることで熱拡散を変化させ、温度上昇への影響を測定する。さらに、現在開発中のナノサイズで水溶液保持のできるナノキュベットを用いて、水溶液内における電子線照射の影響を調査する予定である。 3.電子顕微鏡内における光透過測定システムの導入:これまでに光導入部の構築はほぼ完成してるので、このモジュールを電子顕微鏡にインストールする。カソードルミネッセンスによる発光以外に、同一位置での透過/反射光測定ができるようになり、電子線照射電流密度が小さい場合など発光が弱い条件での温度測定が可能になると考えられる。また、導入光による加熱、パルス過熱についても可能性をさぐる予定である。
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