重金属フリーで環境適合、サステイナブルな次世代蓄電池(二次電池)の電極活物質として期待されるラジカルポリマーでの電荷輸送特性を解明し、全有機電池としての道筋を提示するための基礎研究である。受入研究室で世界的に先駆け展開しているニトロキシド(TEMPO)ラジカルポリマーを対象に、その界面での電荷授受および対イオンの拡散過程を当該研究者が所属機関(端・ウプサラ大)で実施してきた解析法も併用して検討し、電極活物質としての要件を抽出した。また新しい電荷貯蔵サイトの分子設計と高分子化実験も試行した。 TEMPOラジカルポリマーを対象に、電荷拡散による約10μS/㎝の導電性を定量的に解析し、電荷の拡散定数10-9cm2/sと対イオンの拡散定数7×10-10cm2/sより後者が微視的には律速であることを示した。またポッピング機構による自己電子交換での再配置エネルギーが約1eVであること、またラジカル部位周りの極性場が支配因子であることをはじめて明らかにした。以上より、距離10μmでの導電、すなわち添加物無い有機ラジカルポリマーでも数μm厚みで電池電極として作動しうる結論を得た。 このほか有機電池の構成成分としてのテレフタル酸リチウム、電解質ポリエチレンオキシド誘導体の可能性を探索もした。以上、有機固体電池へのアプローチ法をとりまとめた。
|