ZnもしくはNdを添加したMg-重希土類元素(Gd)-Y-Zr合金に押出し加工を施し、押出し材の機械的性質に及ぼす再結晶粒径や再結晶率、晶出化合物・析出物の影響を調べた。また、押出し加工途中の組織変化を観察し、押出し材の組織に及ぼす晶出化合物や析出物の影響も調べた。 Mg-Gd-Y-Zr合金押出し材の再結晶粒径は2.5μmであった。ZnもしくはNdを添加すると、再結晶粒径は1.6μmもしくは1.8μmまで微細化した。これは、ZnやNdを添加することで、押出し加工前に微細な析出物が形成したためである。Ndの添加によって、粗大なMg5RE晶出化合物の量が増え、押出し加工中の再結晶は促進した。一方、Znの添加によってLPSO相が析出した場合には、押出し加工中の再結晶は抑制された。このため、検討合金にNdを添加すると押出し材の再結晶率は増加し、Znを添加すると再結晶率は低下した。 Mg-Gd-Y-Zr合金押出し材の0.2%耐力および破断伸びは、それぞれ336MPaおよび7.6%であった。Ndを添加しても0.2%耐力はほとんど変化しないものの、破断伸びは3.3%まで低下した。これは、Ndの添加によって、粗大なMg5RE晶出化合物の量が増えたためである。一方、Znを添加しても破断伸びは劣化せず、0.2%耐力は371MPaまで向上した。このZn添加に伴う強度特性の向上は、未再結晶粒の割合が増えたためである。このように、Mg-Gd-Y-Zr系合金押出し材の高強度化には未再結晶粒が必須であることを明らかにし、特定の合金元素の添加による析出物の分散によって、再結晶組織を制御できることを見出した。
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