シクロスポリンA(CsA)は、腎尿細管萎縮、間質線維症および進行性腎障害を特徴とする慢性腎障害を引き起こす事が知られている。特に、酸化ストレスおよびアポトーシスは、CsA誘発腎毒性において重要な役割を果たす事が知られている。前年度までの検討により、マウスCsA腎障害モデルにおけるALA/SFCの有効性を明らかにした。本年度は、CsAによるmProx24細胞(近位尿細管上皮細胞)傷害に対するALA/SCの抑制効果を検討すると共に、その機序解明を試みた。 CsAはmProx24細胞に対してアポトーシスを引き起こした。一方5-ALA/SFCは、MAPK経路を介してHO-1およびNrf2の発現の増加によってmProx24細胞に対するアポトーシスを有意に阻害した。5-ALA/SFCによるCsA細胞傷害の抑制におけるHO-1の関与を検討するため、HO-1に対するsiRNAを用いて検討した。その結果、siRNAによるHO-1の阻害は、5-ALA/SFCの細胞保護効果を抑制した。5-ALA/SFCは、CsA誘導性のp38およびErkリン酸化の低下を防ぐ事が確認された。一方、MAPKシグナル伝達の阻害剤の添加は、CsA処理細胞における5-ALA/SFCの抗アポトーシス効果を遮断した。また、5-ALA/SFCはCsA曝露細胞におけるROS産生マーカーであるH2DCFA発現の増加を抑制した。これらのデータは、5-ALA/SFCがin vitroにおけるCsAによる近位尿細管上皮細胞のROS産生、アポトーシス誘導を低下させること、それらの抑制には、MAPK、HO-1が関与している事を示している。また、これらの結果から、マウスにおける5-ALA/SFCによるCsA腎障害の抑制は、腎臓細胞におけるMAPK/Nrf2/HO-1経路活性化を介した過剰なROS生成抑制がその一翼を担っていると考えられた。
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