レーザー駆動イオンビームの空間エネルギー分解計測を可能にする検出器開発

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15F15772
• 研究機関: 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
• 研究代表者: 西内 満美子 (高井満美子) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 上席研究員(定常) (70391315)
• 研究分担者: DOVER NICHOLAS 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 外国人特別研究員
• 研究期間 (年度): 2015-11-09 – 2018-03-31
• キーワード: レーザー / 超高強度レーザー / レーザー駆動型イオンビーム

研究実績の概要

量研機構関西研のJ-KAREN-Pレーザーを用いてレーザー駆動イオン加速実験をおこなった。その時に主要なイオンの計測機器となる、陽子線を空間分解できる検出器を開発した。具体的には、25MeV以上までにわたる連続スペクトルを持つ陽子線を0.1Hzで空間分解してオンラインで検出できる検出器の開発を行った。
レーザーパラメータを変化させるとともに、異なるターゲットを用いて照射実験を行った。これらの実験において上記の検出器を用いることで、陽子線の空間分布およびエネルギースペクトルのレーザー、およびターゲットの条件による違いを系統的に取得した。これらのデータは、イオンの加速メカニズムのスケーリング則を求めるために必要なデータセットとなっている。現在はデータ解析を行っている最中であるが、これらのデータはレーザープラズマ相互作用の物理メカニズムに踏み込むという面においても、さらにレーザー駆動イオン線を医療応用に用いるにあたっても非常に重要なデータセットであるといえる。
2016年の3,4月および2016年11月から2017年3月に行われた実験によって、この検出器によって多くのデータを取得することができ、これらのデータを用いて、現在論文を執筆中である。イオン検出器に加え、電子の空間分解型検出器、および、レーザープローブ系統を追加することによって、レーザー物質相互作用における多くのデータを取得することができた。

現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2016年度の当初の予定であった空間分解型オンラインイオン計測機器の開発を終えプラズマ実験に導入するところまで行った。さらに、当初の予定になかった電子の空間分解型オンライン検出器、およびレーザー光を用いたプローブ系統を立ち上げることも行い、実際のプラズマ実験において、レーザープラズマ相互作用に関する重要なデータを取ることに成功した。取得できたデータのうち一部は論文を執筆し、現在レフェリーからの返事を待っているところである。その他についても現在解析中である。

今後の研究の推進方策

2017年3月までに取得できたデータを解析することで、さらなる高強度化されたレーザーとターゲットとの相互作用時にどのようなイオンビームが発生できるかを検討する(スケーリング則の導出)。
さらに現状においては、25MeVまでしかエネルギー検出能力のない、開発したイオン検出器の高エネルギーイオンへの感度を上げるための試みを行う。具体的には高速応答できるシンチレーターおよび時間ゲートCCDを用いることで、飛行時間分解計測法を導入し、さらなる高エネルギーの陽子線の検出を行うことを目指す。

研究成果

• [国際共同研究] Imperial College London(英国)
  • 国名: 英国
  • 外国機関名: Imperial College London
• [雑誌論文] Laser acceleration of protons with an optically shaped, near critical hydrogen gas target (2017)
  • 著者名/発表者名: Y-H. Chen, M. Helle, A. Ting, D. Gordon, N. P. Dover, O. Ettlinger, Z. Najmudin, M. Polyanskiy, I. Pogorelsky, M. Babzien
  • 雑誌名: AIP Conference Proceedings 巻: 1812 ページ: 090002
  • DOI: 10.1063/1.4975898
  • 査読あり
• [雑誌論文] Staging and laser acceleration of ions in underdense plasma (2017)
  • 著者名/発表者名: A. Ting, B. Hafizi, M. Helle, Y-H Chen, D. Gordon, D. Kaganovich, M. Polyanskiy, I. Pogorelsky, M. Babzien, C. Miao, N. P. Dover, Z. Najmudin, O. Ettlinge
  • 雑誌名: AIP Conference Proceedings 巻: 1812 ページ: 020001
  • DOI: 10.1063/1.4975837
  • 査読あり
• [雑誌論文] Ion acceleration and plasma jet formation in ultra-thin foils undergoing expansion and relativistic transparency (2016)
  • 著者名/発表者名: M. King, R. J. Gray, H. W. Powell, D. A. MacLellan, B. Gonzalez-Izquierdo, L. C. Stockhausen, G. S. Hicks, N. P. Dover, D. R. Rusby, D. C. Carroll, H. Padda, R. Torres, S. Kar, R. J. Clarke, I. O. Musgrave, Z. Najmudin, M. Borghesi, D. Neely, P. McKenna
  • 雑誌名: Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A 巻: 829 ページ: 163-166
  • DOI: 10.1016/j.nima.2016.02.032
  • 査読あり
• [学会発表] High repetition energetic particle beam-profile diagnostics for high-intensity laser-solid interactions (2017)
  • 著者名/発表者名: N. Dover, M. Nishiuchi, H. Sakaki et al
  • 学会等名: 日本物理学会18回年会
  • 発表場所: 大阪府豊中市 大阪大学 日本
  • 年月日: 2017-03-19 – 2017-03-22
• [学会発表] High-repetition energetic particle spatial profile diagnostics for high-intensity laser-solid interactions (2016)
  • 著者名/発表者名: N. Dover, M. Nishiuchi, H. Sakaki et al
  • 学会等名: Symposium on Photon and Beam Science、
  • 発表場所: 大阪府豊中市、千里ライフサイエンスセンター
  • 年月日: 2016-11-24 – 2016-11-25
• [学会発表] Development of a high repetition rate proton transverse beam profile diagnostic for laser-plasma ion sources (2016)
  • 著者名/発表者名: N. Dover, M. Nishiuchi, H. Sakaki et al
  • 学会等名: International Conference on High Energy Density Science、
  • 発表場所: 神奈川県横浜市、パシフィコ横浜 日本
  • 年月日: 2016-05-17 – 2016-05-20
  • 国際学会