研究課題
本研究では,おもに岩礁地性底生有孔虫Glabratella属について,遺伝的集団の形成機構が他の有孔虫と共通するメカニズムで生じるかどうか,原生生物における種の概念を考慮に入れて検証することを目的とした。研究では,Planoglabratella opercularisを含むGlabratella属有孔虫を用いて,同所的に存在し,遺伝的分化後の時間経過がそれほど大きくない2つの遺伝的集団に遺伝的な交流が起こりうるのか,どのような条件で遺伝的な交流が起こるのか,交雑が新たな遺伝的集団の形成に寄与するのかを検証した。Planoglabratella opercularisの遺伝的集団の関係と有孔虫における「種」:自然個体群で得られた遺伝的変異および既往研究で得られた交配集団と形態型,遺伝的な変異から,有孔虫を例とした原生生物における「種」を念頭に,交配集団・非交配集団間の殻の形態的な特徴や生態を検討し,交配可能性を持つ集団との相関を検討した。P. opercularisは,地理的にも生殖的にも隔離するために,地域集団において遺伝的変異が蓄積してきたことが示されていた。本研究の解析の結果,本種には,これまで明らかにされていなかった遺伝子配列を持つ複数の地域集団が存在することが示された。これは,交配実験から明らかにされた輪状種様の集団構造を支持するものであり,さらに,地域集団の規模を識別できる重要な証拠であると言える。有孔虫においても,未分化の遺伝的な集団は,交雑により新たな遺伝的集団が形成しうるという,新たな遺伝的集団の形成メカニズムを示すことができた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Deep Sea Research Part II: Topical Studies in Oceanography
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10.1016/j.dsr2.2017.12.001