イネの籾数増加に関する遺伝子SPIKEが単離されたが、インド型品種の収量を増加するにあたり、どのような経路の遺伝子や植物ホルモンが関与しているかは明らかにされていない。また、どのような環境下において、収量を増加する効果があるかについて調べられていない。本研究では、全ゲノムを網羅する遺伝子に関して発現解析を行った結果をもとに、SPIKEが関連している経路の遺伝子を特定する。関連する遺伝子群から、収量増加に関与する植物ホルモンの経路などの推定を行う。また、栽培技術の観点から、SPIKEの収量は、施肥条件や移植時の苗の生育に大きく影響を受ける可能性があるため、最適な施肥条件・最適な苗の時期の検討を行う。 葉や幼穂のサンプルを用いたマイクロアレイの結果から、籾数増加に関わる遺伝子SPIKEを保有する系統からオーキシン関連遺伝子や、ジベレリン関連遺伝子の発現量の増加がみられた。これらの各遺伝子に、プライマーを設計し、RT-PCRにより、定量的に発現量に差異があるかどうかを確認した。葉と幼穂のサンプルにおいて、それぞれ2~3個の遺伝子において、発現量の差異がみられた。 また、昨年度と同様に、低窒素条件の処理区において、SPIKEの収量試験を行ったところ、低窒素区になるほど、収量増加の傾向がみられた。特に、収量構成要素において、籾数や稔実歩合に違いがみられた。育苗した苗の生育程度(2週~5週)と収量の増加程度の関係性を検証するため、イネを圃場で栽培し、収量や収量構成要素の調査を行い、試験区間の比較を行った。SPIKEの効果が最も現れるのは、4週目と5週目の苗を用いることにより、収量の増加傾向がみられた。収量構成要素においては、4週目と5週目のSPIKEが導入された系統は、穂数がIR64とあまり差がみられなかった。
|