放射光を用いずに、デバイス材料の界面を観察できる手法として、実験室で用いることができる高エネルギーX線源であるTiを用いたX線光電子分光法の手法開発を行う。 そのためには、TiをターゲットとするX線源と、発生する高エネルギーの光電子をエネルギー分析できる分光器が必要である。これらは、既存の市販装置を改造することで可能である。 上の改造を行った後、In基板、Si基板を試料としてTi励起の光電子分光スペクトルを測定した。これらのスペクトルから、Ti励起の光電子スペクトルとして妥当なエネルギー位置に、妥当な強度でピークが出現していることが確認できた。また、バイアス印加によるエネルギーシフトなど、シフト量だけを観測すればよい場合には、大きなパスエネルギーを用いれば(エネルギー分解能は低い)、実用的な測定時間内(30分)で解析可能なスペクトルが取得できることが判明した。また、通常と同様な高エネルギー分解能の測定においても、数時間の測定時間で十分なスペクトルが取得できることが判明した。Cr線源に比べて、Ti線源は測定できる深さはほんのわずか浅くなるがそれでも20nmぐらいにわたって観測可能な一方、Crよりも光イオン化断面積は一桁ちかく大きく、X線の自然幅が比較的狭いので、実験室レベルの界面測定XPSの有望なX線源であることが判明した。 一方、最初から予想できることだが、Ti励起のX線はダブレットであり、薄い酸化膜が付いたSi基板などのように、酸化状態と単体元素状態(ゼロ価)のピークの一部が重なり、今までの解析に向かない。そのため、酸化膜のないSi、100nm厚のSiO2膜、厚さの異なるSiO2膜のついたSi基板、のXPSスペクトルと、角度を様々に変えて測定した。得られたスペクトルを機械学習で解析する予定である。
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