研究実績の概要 |
多孔性金属錯体 (MOF)は、金属イオンと有機配位子の種類を組み合わせることによって、無限といえるほどの物質の多様性があり、ガスの吸着・分離材料や触媒として使われている。MOFとナノ金属触媒との複合物質では、既存のナノ物質を凌駕する高効率・高選択性に優れた触媒になり得る可能性があり、近年、精力的に研究が行われている。 最近、我々はMOF【Cu3(BTC)2 (BTC = 1,3,5-benzenetricarboxylate)、略称:HKUST-1】をPdナノ結晶に被覆すると、PdからHKUST-1の電荷移動により、Pdの水素吸蔵量ならびに速度を2倍に向上させることに成功した。一方、周期表で隣接するAgとRhはバルクにおいてお互い混ざらない組み合わせであるが、ナノサイズ化により、新規AgRh固溶合金ナノ粒子を創製することに成功した。そこで、新しい水素吸蔵材料の探索のため、AgRh固溶合金ナノ粒子にHKUST-1が被覆した新規複合体(AgRh@HKUST-1)を作製し、水素吸蔵特性を調べることを目的とし、まずは、AgRh@HKUST-1をボトムアップ手法より作製した。また、水素吸蔵特性を調べるため、水素圧力-組成等温(PCT)曲線を測定した。PCT曲線の測定結果、AgRh@HKUST-1はAgRh固溶ナノ合金に比べ、多く水素を吸蔵していることがわかった。HKUST-1単独では0. 014 Hの水素を吸蔵することを考慮すると、AgRh@HKUST-1の吸蔵量はAgRh固溶ナノ合金とHKUST-1の吸蔵量の足し合わせで再現される。このたび合成したAgRhナノ粒子の粒径は以前に報告したものよりも大きく、水素吸蔵量も少ない。今後、より小さいAgRhナノ粒子とHKUST-1の複合体を作製し、金属とMOFの界面の割合を増やすことで、水素吸蔵量の飛躍的な向上が期待される。
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