研究概要 |
本研究は、フォトニック結晶による自在な光子制御を目指す新しい学問領域「フォトニック結晶工学」を深く追求するとともに、各種デバイスへの展開を図ることを目的とする.本目的達成のため,a)高精度試料作製,b)構造揺らぎの影響の理論的・実験的検討,c)各種の光子操作とその効率の最大化,d)欠陥エンジニアリングの高度化と新構造(ヘテロ構造)の導入・発展,e)3次元欠陥加工とその効果の検討,f)光パルス入射による動的特性評価,g)非線形現象の導入と高機能化,の順に系統的に研究を進めている.本年度は,e,f,gの課題に沿って研究を進め,以下の成果を得た. (1)これまでに開発したマルチステップヘテロ構造共振器に対して光パルスもちいて光子の保持時間を直接的に測定した。これにより波長の3乗程度という微小な領域に1nsという長い時間光子が捕らえられている様子を明らかにし、共振器Q値が〜120万に達していることを示した。 (2)昨年度開発した偏波変換機能をもちいて偏波ダイバーシティにより2次元スラブ型デバイスの偏波無依存動作を可能にするデバイスの設計を行った。通常の2次元スラブ構造ではTE-likeモードに対してのみ動作するが、シミュレーションによってこのデバイスではどちらの偏波モードの光を入力しても波長分波動作が行われることが示された。この設計方針をもちいれば、波長分波だけでなく全ての2次元スラブデバイスの機能を偏波無依存化できるため、デバイス応用において極めて有用である。 (3)ヘテロ構造における界面反射による干渉を利用することで、光照射により共振器Q値をピコ秒程度の非常に短い時間で自在に変化させることに成功した。またこれをもちいて高Q値共振器へ光パルスを90%以上の効率でトラップする手法を提案し、その基本動作を実験的に示した。 さらに,フォトニック結晶工学の深化に不可欠な光ナノ共振器が発光現象に与える効果についても検討を行い、その成果はScience等のインパクトファクターの極めて高い雑誌にも掲載され,世界的に大きな注目を集めた.
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