研究課題
今年度は5年計画の初年度に当たる。誘導加速シンクロトロンの実証試験に不可欠なデバイスの開発と実際にKEK 12GeV-PSに導入する場合の制御系の整備をおこなうと共に、スーパーバンチ加速のビーム物理の視点からの運動解析と装置性能の条件を探った。(1)2.5kV出力の誘導加速空洞を4個製作した。磁性体、金属空洞、加速ギャップを持った内導体等を別々に製作し、研究所内で組み立てた。また、これらを4連加速空洞として構成するための共通架台、冷却システムも部品から組み立てた。容量、インダクタンス、抵抗等の基本電気特性を周波数の関数として測定し、設計計算と比較し、ほぼ一致する事を確認した。又、ビーム自身から見た空洞の電気特性(カップリング・インピーダンス)の測定を縦方向と横方向についてS行列法で求めた。(2)前年度から続けている50kW高圧モジュレーターR&D3号機の特性試験を行なった。スイッチング素子として使用しているMOSFETの直列構成に伴うゲートturn-on時のソース・ドレイン間電圧のアンバランスによる動作不具合、急峻な電圧立ち上がりに伴う寄生振動等の問題点の把握と対策法について検討して来た。特に前者はゲート駆動電源部のDC-DCコンバーターの持つ絶縁容量の絶対値の大きさを下げる必要性を見出した。以上の結果を踏まえ、かつMOSFETの発熱の冷却能力を増強したモジュレーター3台をDC充電器と併せて製作した。(3)誘導加速試験には加速装置を全てデジタル信号で制御するコンセプトが立てられている。誘導電圧生成はビームバンチ信号と閉じこめ用のRF信号を合成して加速器コンントロール室で作られ、加速器トンネル近傍においた高圧モジュレーターのゲート駆動用の親信号として送られる。これら信号処理方法が数回のMachine Studyを行って、実際の加速器機器を運転しながら確かめられた。(4)実証試験時のビームの振る舞いを広汎な計算機シミュレーションによって確かめた。実証試験第1ステップで予定している1RFバンチの加速では問題ないが、ドループによる誘導加速電圧の低下が実際のスーパーバンチの加速では許容出来なく、補正してやらねばならない事を見出した。
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