研究課題/領域番号 |
15GS0306
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 裕司 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40157871)
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研究分担者 |
渡邊 秀典 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00202416)
市川 眞澄 東京都医学研究機構, 神経科学総合研究所, 副参事研究員 (20124414)
岡村 裕昭 独立行政法人・農業生物資源研究所, 動物科学研究領域脳神経機能研究ユニット, ユニット長 (60213972)
武内 ゆかり 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (10240730)
菊水 健史 麻布大学, 獣医学部動物応用科学科, 准教授 (90302596)
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キーワード | 哺乳類 / プライマーフェロモン / 構造決定 / 化学合成 / 視床下部・辺縁系 / 神経行動学 / フェロモン受容体 / フェロモン産生機構 |
研究概要 |
本研究の目的は、哺乳類プライマーフェロモンを同定し、その作用機序と産生機構を解明することでフェロモンを介したケミカルコミュニケーションの実態を明らかにし、またフェロモン応用への基盤を形成しようというものである。 哺乳類における代表的なフェロモン効果の中から、フェロモンの中枢作用機構が明らかにされた唯一の現象である反芻家畜のMale Effect(雄効果)に着目した。バイオアッセイ系を確立するために、モデル動物としてシバヤギを選び、詳細な脳地図の作製と脳定位手術法の開発を行い、慢性記録電極を正確に留置する方法を確立し、フェロモンの標的部位である視床下部GnRHパルスジェネレーターの神経活動をmultiple unit activity:MUAとして記録解析する方法を開発した。これにより、フェロモンの効果をリアルタイムに観察することが可能となった。 平成19年度と20年度の研究ではヤギ視床下部にキスペプチンニューロンの位置を同定し、MUA電極の標的とした。キスペプチン神経集団から記録されるMUAのSN比は著しく改善され、フェロモン効果の詳細な解析が可能となった。またヤギとヒツジのフェロモン受容体V1Rをそれぞれ20数種類同定して調べたところ、反芻家畜の間ではアミノ酸の相同性が95%を超える高い種間相似性が認められ、また推定三次元構造の比較でもヒツジとヤギではリガンド結合部位周辺の構造はほとんど一致していることが判明した。ヒツジとヤギという異なる動物種が共通のフェロモン分子を用いていることが示唆され、実際に雄ヤギのフェロモンは雌ヒツジに作用し、逆に雄ヒツジのフェロモンが雌ヤギにも効果を持つことが証明され、種間でのクロスオーバーが確認された。 フェロモン活性と相関して出現する16の化合物を同定し構造決定した。この16成分を実際の試料中における混合比と濃度に合わせて調製し、フェロモン活性を調べた結果、雄効果フェロモンの活性が確認された。 情動系フェロモンである齧歯類の"警報フェロモン"についても音響驚愕反応を指標に活性画分の絞り込みを行い、候補分子を同定し現在その構造決定を目指して合成を進めている。
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