研究概要 |
1細胞の極性形成を制御するシグナル伝達の解析 Rac/Cdc42のエフェクター分子であるIQGAPの神経細胞極性形成・軸索伸長における役割について解析を行った。海馬神経細胞にはIQGAP1,2,3の3種類のisoformが発現しているが、この中でIQGAP3がRac/Cdc42の下流で軸索伸長に寄与していることを示した。また、RacとRhoのシグナル経路が互いに拮抗することが細胞の極性を作り出す上で重要な役割を果たしていると考えられているが、我々はRhoのエフェクター分子であるRho-kinaseがRac活性化因子であるSTEFをリン酸化してその機能を抑制することを示唆する結果を得ており、その分子メカニズムの一部を説明するものであると考えている。さらに、HUVEC細胞においてトロンビン刺激に応じて起こる持続性のミオシンのリン酸化をモデル系としてコンピューターシミュレーションによりシグナル伝達ネットワークを解析した。in silicoでは一過的なミオシンリン酸化を再現することは出来るが、持続的なミオシンリン酸化は再現出来ず、既知のシグナル経路に加えてRho-kinaseの活性についてpositive feedback loopが存在することが予測された。 2細胞内輸送と極性形成の関係 統合失調症脆弱因子Disc1について結合分子の同定を行い、Kinesin1,Lis1,Nudel,14-3-3ε,Grb2がDisc1に結合することを見出した。我々はDisc1がモーター分子であるKinesin1と微小管ダイナミクスに関与するLis1/Nudel/14-3-3ε複合体を連結させることで神経軸索伸長に関わっていること、またKinesin1とRasシグナル系のアダプター分子であるGrb2を連結させることで神経栄養因子BDNF依存性の軸索伸長に関わっていることを示した。
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