本研究の目的は、「標準化」が戦後のデザイン論の文脈のなかでどのように語られたかを、勝見勝(1909-1983年)の特に1960年代までの言説を手がかりに明らかにすることである。 本研究では、おもに二つの方法をとった。 ⅰ) 勝見勝の言説に基づくアプローチ、ⅱ)「標準化」の概念史的アプローチ 勝見による標準化の意味を明らかにするために、まず、ⅰ) に即し、研究をすすめた。資料として勝見勝の著作集、編著書および雑誌(『工芸ニュース』『芸術新潮』『アトリエ』『美術手帖』『美育文化』『リビング・デザイン』など)、新聞記事を収集し、それらをもとに、標準化が勝見のデザイン論全体にどのようなに位置づけられるかを考察した。本年は基礎研究として、特に勝見の「生活」、「様式」、「趣味」という言説に着目し、勝見のデザイン論におけるそれらの意味を整理した。その結果、勝見の標準化への視座が、それらの言説と密接に関わっており、今後さらに勝見のいう「総合」という視点から標準化について考察する必要があることがわかった。研究成果は論文としてまとめ、桑沢デザイン研究所の紀要である『研究レポートNo. 43』(2016年)に投稿した(論文標題「「生活」からみる勝見勝のデザイン論-戦後の民藝運動批判、デザイン批判を手がかりに-」)。 次に、ⅱ) に即し、戦後の標準化事業の流れやデザイン関連雑誌での標準化の扱われ方を照らし合わせ共時的に位置づけ、標準化が戦後のデザイン論、特に1950年代のデザイン批判の文脈で語られる際にどのような意味を持ち得たかを考察した。研究成果は、前述の論文「「生活」からみる勝見勝のデザイン論-戦後の民藝運動批判、デザイン批判を手がかりに-」の一部として発表した。
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