○問題意識 都市部の高校と過疎化が進む地域の高校との在籍状況のバランスが崩れており、過疎化の進む地域では、高校そのものの存続が危ぶまれる状況が生み出されている。しかし地域の小規模高校は、それを介した住民同士の交流が図られたり、保小中高が連携した一貫教育が図られるなど、コミュニティ維持の機能を担うため、なくてはならない存在である。従って「財政負担の問題だけで地方から高校教育の灯を消してはならない」とのコンセプトに立ち、小規模校が独自の魅力を創出し、持続可能性を高める方策を提示しようと考えた。 ○研究方法 小規模高校やそれが存在する自治体HPの閲覧、図書館における新聞や文献調査を実施した。また、小規模ながら一定数の生徒を確保している北海道(礼文高校・鹿追高校・訓子府高校)、中国地方(島前高校・加計高校・千代田高校等)においてヒアリング・アンケートを実施し、独自の魅力創出についての考察を行った。 ○研究成果 開講科目が限られる、部活動の種類が少ない、集団の中で多様性に触れる機会に限られるなど、スケールメリットの面で小規模校はどうしても見劣りする。調査したすべての高校を含む多くの小規模校で、後援会・振興会といった組織を立ち上げ、地元自治体からの財政支援を受けていることが明らかになった。しかし生徒アンケートや統計による分析では、小規模校に入学を決めた主要因は財政支援ではなく、学校独自の魅力創出に努めた結果であることが明らかになった。進学・就職を含めた進路実績が高いほど、次年度入学者が増加している。すなわち限られた中で高校卒業後を見据えた多彩なカリキュラムを展開し、キャリア教育に力を入れているのである。専門科目教員の不足を補うためにICTを利用した遠隔授業を実施するほか、小規模校をサテライト校と位置付け、大規模校から一定時間教員を派遣し高校間の交流・連携を実施するなどして、多くの大学合格者を輩出するなどの取組が見られた。さらに将来の地域を担う人材を育成するため地域から人材を派遣してもらい、学校設定科目の開講を行い、地元優良企業への就職を斡旋するなどの例も見られた。 小規模校には存立する意義があり、自助努力のほか、市町村レベル・都道府県レベルで財政に負担をかけず、教育条件の維持向上を可能とする工夫が求められる。これ等の研究から新たな研究課題が明らかになった。
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