○研究目的 : 保育士ニーズが増大しているなか、保育士を量的に増やすだけでなく、平均勤続年数を引き上げ離職による保育士減少をくいとめることも、保育士確保のための重要な取り組みとなってきている。保育士の資格を有する者が保育士職に就職を希望しない理由は、すでに平成23年度厚生労働省委託事業として全国的な調査が発表されているが、今回の調査では新規学卒就職者の離職行動に焦点をあて、現状を把握し、要因を分析することを目的とする。 ○研究方法 : 今回の研究では、新規学卒の保育士が、卒業後早い時期に離職行動を起こす要因について、地域因子を「福岡市」と限定し、初めて保育士として働いた保育園の職場環境と離職の関係を探った。平成27年平成27年11月1日現在の状況について、調査票を配布し、調査主旨に賛同した者から回答を得た。調査票は502件配付し、回答は140件あった。そのうち有効回答は136件だった。 この調査票から、「早期離職者の退職理由」、「退職した者と退職しなかったものの職場環境の違い」について、研究を行った。 ○研究成果 : 新規学卒者の5年未満の離職理由の上位は「園内の人間関係がよくなかった」「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「健康上(体力・メンタル)」の3項目であり、全年齢を対象とした同様の調査と異なり「賃金の条件が悪かったため」は6番目の理由であった。また、離職行動をおこす者とそうでない者の違いは、園長や主任といった「立場が上の者との人間関係」、「労働時間・休日・休暇などの労働条件」が要因となっていることを明らかにした。一方、賃金については、離職行動をおこす者もそうでない者も感じ方に差がないことがわかった。ただし、自由記述欄には、仕事離職行動の有無にかかわらず、仕事の内容にはやりがいを感じる反面、仕事の量、質に比べて賃金が低いことが記述されていた。若年労働市場においては、流動性は不可避であるが、就業を継続に導くためには、保育士と保育園のマッチングの重要性が浮かび上がってきた。
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