球技の授業は、他の競技と比べると、生徒に人気がある授業ではあるが、ボール操作が上手な生徒ばかりがボールを扱い、苦手な生徒にはなかなかボールが回ってこず、「球技は楽しくない」と思い込んでしまうことが多々ある。 そこで本研究では、ゴール型種目において、空間を作ったり空間に走り込むなどの特性項目と、チームで立てた作戦を記入し、それが実行できているかの確認項目が書かれたチェックシートを準備し、それらの項目が実行できているかどうかを確認するために、チームに1台タブレット端末を準備した。タブレット端末で練習や試合の様子を撮影、それを確認しながらチェックシートでそれぞれの項目ができたかどうかの確認を行い、そしてまた新たな作戦を考える。これを繰り返すことにより、その運動の特性を理解し、思考力と運動に対する意欲が高まると考えた。本研究の前後に、体育における学習意欲検査(AMPET)を行い、授業前後で生徒の意欲がどう変化したかを測定し、チェックシートで、思考の変化を分析した。 授業では作戦を重視し、自分の技能で何ができるか、それを活かしてチームとしてどのような作戦を立てていくかを考えさせた。最初は声をかける、走る、などの種目の特性とはあまり関係のない作戦が多かったが、授業を進めるにつれて、特性を活かした具体的な作戦が増えていき、タブレット端末での確認も、具体的な作戦が増えていくにつれて見るポイントがわかりやすくなり、効果的に使えるようになった。またAMPETの結果は、授業前と後では「学習ストラテジー(体育学習を効率行うためのうまくできる方法や手段を考えたり、実行したりする程度)」、「学習の価値(運動がよくできるということに対する価値観や目的意識、学習することの必要性を示す)」の2つの項目の得点が上がった。この結果から、授業前と比べると、種目に対しての思考力が向上し、意欲が向上したことがわかる。
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