1 研究目的 江戸時代、我が国では路上で移動しながら物品などを販売する物売りが盛んに行われていた。物売りが発する独特の節回しをつけた売り声すなわち「物売りの声」を「声による表現」として捉えることで、子どもたちが声と言葉との関連について考えたり、多様な発声を使い分けたりする学習へと発展させていくとともに、子どもたちの音楽的な成長を促したい。 2 研究方法 ・国内各地の中学校における「曲種に応じた発声」に関する学習指導案、研究紀要等の資料を通して、指導計画の実際について考察する。また、これまでに発表された「物売りの声」に関する学術研究や、民俗芸能、異文化理解や多文化教育に関する論文を手がかりとして、声を磨く表現学習の意義や授業のあり方について考察した。 ・「物売りの声」の他、歌に限定しない声の表現(例えば、相撲の呼出が行う「呼び上げ」のように、独特の節回しや発声の仕方で表現するもの)や世界の諸地域の「装飾的旋律」を伴う歌唱曲について調査し、教材として相応しいものを検討した。 ・研究内容の一部を取り入れた授業実践を近隣の小中学校に依頼したり、本校での研究成果を研修会で紹介したりするなど、地域の学校との連携を深めながら研究を進めた。 3 研究成果 食材(鮮魚、蜆、納豆など)や菓子(飴、焼芋など)、生活用品(竿竹、風鈴など)を売る「物売りの声」を教材として導入し、それらを表現する学習を通して、子どもたちは多様な声を使い分ける体験をすることができ、自身の声を磨き、表現の幅を広げることにつながった。
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