研究実績の概要 |
鑑賞リテラシーを高める手立てを探るため, アニマシオンの手法を取り入れながらアートゲームの開発に取り組んだ。これまでのところ日本の学会誌等においては, アニマシオンとアートゲームをリンクさせた研究は見当たらない。そこで本研究では, 読書におけるアニマシオンと図画工作科におけるアートゲームの類似点を挙げながら, それぞれの先行研究をもとにアクティブな鑑賞の在り方について考えることとした。まず, 先行研究の中で得た知見をもとにアニマシオンの手法を生かしたアートゲームとして考えられるものを対応表にまとめた。そして「アートゲームパズルル~つないでいっしょに見つけよう~」という授業実践を行い, 学習指導案や実際の展開等を示しながら詳細を述べた。授業は, アクティブ鑑賞コミュニケーションが成立しやすいよう大きなジグソーパズルを作成して行い, 協働的な学びが生まれる状況を作ろうと2種類のお話タイムを取り入れた。アートゲームをとおして鑑賞リテラシーが高まったかどうかは, アートゲーム導入前と導入後の気づきが量的・質的にどう変容したかで検証した。その結果, 一定時間内に書き出された気づきの量は, アートゲーム導入前は平均約9個だったのだが, アートゲーム導入後は約11個となった。次に, 書き出された気づきを「児童・生徒の気づきを分析するためのルーブリック」を用いて質的に検証した結果, 導入前に比べて鑑賞リテラシーが上がった児童もいたし, 上がらなかった児童もいた。先行研究及び授業実践から見えてきた課題は, 子どもが喜ぶアートゲームをするとすれば, 能動的になるための時間を十分保障する必要があるということである。また, 児童の気づきを単発で終わらせないように, 造形要素に基づいてタッチや色から「なぜ」と根拠を問うなど, 児童が複数の客観的事実を繋げやすくする配慮が必要であるということである。
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