溶接は欠陥が表面に現れないことが多く、実習生は失敗に気づく事ができない。技能を修得するには訓練を重ねる必要があるが、溶接は電気による感電、発生する紫外線等による目や皮膚のやけど、溶接煙による呼吸器の障害など危険が大きい。本研究はサーモグラフィとビデオカメラを用いて溶接の可視化ビデオ教材を開発し、溶接実習において教育効果を高め、実技時間を短縮することが目的である。 まず、実習生の溶接片で曲げ試験を行い、試験片に現れた溶接欠陥を集計し、その欠陥の原因を分析した。その結果、欠陥の原因として多いのは「アーク長が不適切」「溶接棒の角度が不適切」「運棒の速度が不適切」であることが分かった。そして良い溶接、悪い溶接をサーモグラフィ、ビデオカメラを用いて撮影し、欠陥発生時と健常時の違いを分析した。サーモグラフィによる温度分布計測では、悪い溶接では熱影響部が通常より広がる様子や偏る様子が確認できた。 溶接のビデオカメラ撮影はアーク光の輝度が高いため、通常の方法では溶融池を撮影できない。その為フィルターを購入し、溶融池を撮影し、動画編集ソフトにて合成した。悪い溶接では、アークの集中性に欠けていたり、アークが斜めに飛んでいる様子が確認できた。 撮影した動画や温度分布を動画編集ソフトにて編集し、溶接可視化ビデオ教材を製作した。製作したビデオ教材は来年度以降の工学実習にて利用し、更に改善していく予定である。この研究成果は溶接実習において、「教育効果の向上」「環境改善」「経費削減」等の効果が期待できる。
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