本研究では、高専学生に向けた、機械・電気・情報等の複数分野の単元を盛り込んだ学習キットによる学習の提案を試みた。この学習により、複合的な知識・技術を習得でき、普段学習している専門の知識・技術の活用や他の専門分野のテクノロジーとの関わりに対し理解を深める等のエンジュアリング能力向上を伴いつつ、手ごたえややりがいを感じられることを目指した。 本キットは「簡易エレキギター」を完成させるものであり、盛り込んだ単元は、機械 : 3DCADによるギターボディ部作図、電気 : 簡易ピックアップによる電磁誘導現象の実験、情報 : プログラミングによるエフェクト効果の生成であり、全てを含んだ学習キットを開発した。 本キットを用いた学習試行のために、演習・実験のための予備知識(ボディ部の役割、3Dプリンタ、電磁誘導・ピックアップの原理、プログラミング説明)を載せた簡易テキスト、および演習・実験後に行う簡易な復習問題シートを用意した。さらに総まとめとして、全ての単元を振り返り、本キットに対して自分が得意と感じた単元での改良したい点、チームで取組む場合チームメイトに改良をお願いしたい点等を想像して記入してもらう振り返りシートも用意した。 被験者は仙台高専名取キャンパスの各学科2年生5名(機械1、建築1、材料2、電気1)であり、3つの単元と振り返りシート記入を計4回(1~2時間以内)に分けて実施した。 学習試行では、被験者にとって易しすぎたり、また難しいと感じても理解につながるステップを踏んだ課題が少なく消化不良となったりと、手ごたえややりがいを感じさせるための改良すべき点は多分に見られた。しかし、”得意な単元だけできても他の部分ができないと成り立たないのを実感した””できなかった単元をできるようになったことで(ギターを)構成できることを実感しだ”等の声が得られ、本キットによる複合的学習は学習動機づけに有効であると結論づけた。
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