日常の中にある数理を体感することにより数学や理科のおもしろさ、有用性を実感できるような課題の検討を行った。課題例をいくつか挙げると「ビュフォンの針の実験」、「振り子の実験」、「おりがみで多面体を作成する」「紫外線の実験」、「素数の性質を探る」、「万華鏡の鏡の形を変える」、「東京スカイツリーで数学を体感する」、「東京理科大学数学体験館訪問」、「リスーピア訪問」、「東京大学数理科学研究科訪問」、「針金の輪に張る膜一極小曲面」などがある。 上記の課題の中で、「東京スカイツリーで数学を体感する」について具体的に説明する。東京スカイツリーからどこまで見えるか、相似や三平方の定理を使って計算し、展望台から見える景色を模造紙に描いていく。さらに、スカイツリーの展望台に上って、模造紙の景色と実際の景色を比較する。比較して違っていたところを修正し、模造紙の景色を完成させるというのが課題の流れである。 教科書を使って相似や三平方の定理を学ぶ場合、直角三角形の1辺の長さや教科書の問題の解答を求めることはできるようになる。しかし、三平方の定理の有用性や三角比を学ぶ意義を実感することは、なかなか難しい。 スカイツリーからどこまで見えるか考えるときに、図を描いて考えていく中で、地球の半径を使うことに気が付き、円の接線が接点を通る半径と垂直であるという、数学の問題を解くためだけにあった知識が、実生活の中で役に立つことを実感できる。 一般的な数学の授業では、単元の内容を学び、それを活用した問題を解くという流れになりがちである。その場合、単元間のつながりが、生徒になかなか見えにくい。「体感する数理」では、日常の中にある課題を解くために数学を学ぶという逆の流れを重視し、いくつかの単元を縦断する課題を作成することができた。
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