研究実績の概要 |
【研究の目的】抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤であるインフリキシマブ(IFX)やアダリムマブ(ADA)は炎症性腸疾患(IBD)治療薬であり、寛解導入療法から寛解維持療法まで幅広く使用されている。長期投与例において、抗IFX抗体、抗ADA抗体(IFXあるいはADAに対する中和抗体)の産生による寛解導入後の二次無効例が報告されている。IBD患者におけるIFX、ADAおよび中和抗体の血中濃度測定を実施し、血中濃度に基づいた投与量や治療間隔の調節を行う取り組みが開始されているが、未だ十分なエビデンスは構築されていない。 本研究は、IBD患者におけるIFX、ADA及び中和抗体の血中濃度測定法を確立し、これら血中濃度と治療効果に基づく治療アルゴリズムについて検討を行った。 【研究方法及び成果】既報(Journal of Immunological Methods 360(2010), J Gastroenterol 47(2012))の方法を一部改訂しELISA法による血中濃度測定法を確立した。IBD患者94例(IFX 67例、ADA 27例)において、投与直前のトラフ値の血中濃度について評価した。IFX症例における、標準投与(5mg/kg, 8週間間隔)での投与割合は31.3% (67例中21例)であり、大半の患者において増量(最大10mg/kg)や投与間隔短縮(最短4週間隔)が実施されていた。IFXトラフ値(平均値)は、標準投与群に比べ、投与調節群において高値に維持されていた。しかし、投与調節を行っていたにも関わらず、検出限界濃度(2μg/mL)付近の血中濃度低値を示す症例を認めた。 中和抗体の血中濃度測定法については、現在検討継続中である。測定法について確立次第、治療効果と血中濃度の関係についての検討する予定である。
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