KRAS遺伝子野生型大腸癌患者における抗EGFR抗体薬抵抗性の原因として、遺伝子解析の他にもタンパク質の質的・量的変化が重要と考えられる。本申請課題では、質量分析計を用いて腫瘍組織中のタンパク質を網羅的に解析し、抗EGFR抗体薬による治療効果との関連性を評価することで、KRAS遺伝子野生型の大腸癌患者に対する抗EGFR抗体薬の効果予測に有用なマーカータンパク質を検出することを目的とした。 まず、KRAS等の抗EGFR抗体薬の効果に関連する遺伝子が野生型であり、抗EGFR抗体薬の1つであるセツキシマブの感受性が異なる6種類の大腸癌細胞株(感受性株 : C99、SW48 部分耐性株 : HT55、C10 耐性株 : COLO320DM、CACO2)より抽出した全タンパク質を細胞質および細胞膜タンパク質に分画化し、還元アルキル化後、トリプシンにより断片化した。得られたサンプルを脱塩・濃縮カラムおよび界面活性剤除去カラムにより精製・濃縮し、LC-TOF MSを用いて解析した。得られた全成分ピークを主成分解析および判別分析を行うことで、セツキシマブの感受性と相関する成分ピークを56種類抽出することができ、そのうち、ピーク強度とセツキシマブ感受性が有意に相関する3つの成分ピークを検出することができた。 現在は、より高感度にセツキシマブ感受性を予測できる成分ピークを検出するために、カチオン交換カラムを用いた分画化等を含めた前処理方法の検討を行っている。また、LC-TOF MSにて検出された成分ピークのアミノ酸配列を同定するため、LC-MS/MSを用いた解析を行っている。今後、患者検体の測定を行い、細胞株より検出したセツキシマブ感受性予測ピークの臨床的有用性の評価を行う予定である。
|