研究実績の概要 |
パゾパニブは経口の分子標的抗がん薬であり、国内では腎がんの治療薬として承認されている。パゾパニブは、既存薬のスニチニブよりも骨髄抑制や消化器症状がなく、今後の進行腎がんのキードラックとして位置付けられている。しかし、一部の患者では肝不全により死亡に至った例が報告され、その危険因子の解明が喫緊の課題である。 今回、パゾパニブを投与された腎がん患者における血中濃度測定および遺伝子多型解析は順調に集積されている(11名、採血70ポイント)。しかし、予定症例数(50名、300ポイント)には達しておらず、現在、肝毒性の要因をPK/PD/PG解析するためのデータ整理を行っているところである。今回は、パゾパニブを投与された透析患者で重篤な肝機能障害を来した症例を経験し、パゾパニブの透析による蓄積性を検討したので報告する。 1)肝不全を来した透析患者においてパゾパニブの血中濃度を解析した症例1) 70才男性。転移性の腎がんで、透析を施行中。スニチニブ等で前治療をしていたが、肺転移巣の増大のためパゾパニブが400mg/日で開始となった。開始3日後にGrade3の肝機能障害が発現した。休薬10日後に、200mgを隔日投与で再開され、再開7日後のトラフ濃度(透析前)は2,900ng/mLと低値であったため(有効域は15,000ng/mL以上)、200mg/日へ増量となった。パゾパニブ開始34日目(非透析日)および35日目(透析日)にパゾパニブの血中濃度を継時的に採血し、トラフ濃度、最高血中濃度およびAUC_<0-24>値は透析日と非透析日で差はなかった。投与開始60日目に、G1の肝機能障害を発現したためパゾパニブは中止となった。本症例において、パゾパニブの薬物動態は透析の影響を受けないことがはじめて示された。 1)S. Noda et al., Clin. Genitourin. Cancer, in press
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