【研究目的】近年、造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)予防において、メトトレキサートに対するミコフェノール酸(MPA)の優位性が報告されており、京都大学医学部附属病院においても、使用する症例が増加している。MPAはリンパ球のイノシンモノリン酸脱水素酵素(IMPDH)を阻害することで免疫抑制効果を示す。申請者らはこれまでに、MPA血中濃度のAUCO-24を40μg・hr/mL以上に保つことが急性GVHDの抑制に繋がること、血中濃度とIMPDH阻害に相関があること等を明らかにしてきた。一方で、血中濃度とIMPDH阻害活性およびGVHDとの関連性が乏しい症例も経験している。そこで本研究では、GVHD制御に向けたさらに精度の高い個別化投与設計法の開発を目的とした。 【研究方法】造血幹細胞移植を施行した患者33名を対象に、MPA血中濃度およびIMPDH活性はLC-MS/MSを用いて、IMPDHの遺伝子多型はリアルタイムPCRを用いて測定した。患者情報および臨床アウトカムは電子カルテより収集した。 【研究成果】MPA及び代謝物であるMPAGとAcMPAG濃度を用いた同時解析の結果、MPA濃度は1次吸収を伴う1-コンパートメントモデルで近似し、1次消失で代謝されるモデルとなった。両代謝物濃度は1-コンパートメントモデルで近似し、MPAGの約25%が腸肝循環を受けることが示された。MPAからMPAGへの変換率は約99%で、残りはAcMPAGに代謝されることが示された。IMPDH活性は最大効果モデルで近似できた。変動因子として両代謝物のクリアランスに、クレアチニンクリアランスが抽出され、IMPDH遺伝子型との関連は認められなかった。またロジスティック回帰分析の結果、グレード2以上のGVHD発症にはドナー-レシピエント間におけるABO主不適合が大きく関係することが示唆された。
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