薬剤性間質性肺炎(DILD)は癌薬物療法を妨げる主要な要因の一つである。本邦のDILDの頻度は諸外国と比べて高いとされ、さらに肺癌患者は重度の喫煙歴、肺への放射線治療歴、既存の肺病変等の理由から、そのリスクが高いと予想される。DILDを発症した癌患者は、癌薬物療法の中断を余儀なくされ、DILDの治療に専念する必要がある。生涯にわたり癌治療が再開できない症例や、DILDにより死亡に至る症例も少なく、臨床上重要な問題となっている。 当院呼吸器・膠原病内科において2007年4月1日~2013年3月31日に癌薬物療法が施行された肺癌患者を対象に、DILD発症のリスク因子や予後不良因子をレトロスペクティブに検討した。DILD発症の有無は、日本呼吸器学会発行の「薬剤性肺障害の診断・治療の手引」を参考に、身体所見、臨床検査値によりDILDが疑われた症例において、原疾患の悪化や感染症発症を除外し、判断することとした。 対象患者は459名であり、そのうち、33名(7.2%)がDILDを発症しており、そのうち2名は2剤の薬剤でDILDを発症していた。DILD発症のリスク因子として、既存の間質性肺炎があることが抽出された。さらに、DILD発症後の予後不良因子を検証したところ原因薬剤がEGFR-TKIであること、過去に2剤以上の治療歴があることが同定された。さらに、DILD発症後の転帰を確認したところ、次治療導入できた患者は5例(14.3%)のみで、BSCとなった患者は15例(42.9%)、ステロイド治療も死亡した患者は15例(42.9&)と多くの患者で癌化学療法の中断を余儀なくされていた。 DILDの診断は難しく、肺癌患者の癌化学療法における薬剤性間質性肺炎の発現を詳細に調査した報告は少ない。本研究結果は、肺癌薬物療法において重篤な有害事象を回避することにも繋がる有益な情報である。
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