研究実績の概要 |
【目的】本研究ではEGFR-TKIであるエルロチニブの血中薬物濃度の測定(Pharmacokinetics)と関連する代謝酵素、薬物トランスポーターの遺伝子多型解析(Pharmacogenetics)を行い、抗腫瘍効果や副作用の発現状況(Pharmacodynamics)との関連性について検討した。 【方法】名古屋大学医学部附属病院呼吸器内科病棟において、EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対してエルロチニブを一週間以上内服している患者から採血(Day1、Day8の服用直前、服用4時間後)後、血中濃度を液体クロマトグラフ/タンデム質量分析(LC/MS/MS)法(m/z : 394.0→278.3)により定量した。遺伝子の多型解析は、polymerase chain reaction (PCR)法等を用いてった。解析する遺伝子は、CYP3A4, CYP3A5およびP-糖タンパク質(ABCB1)とした。 【結果】エルロチニブ服用患者9名における投与量は、いずれも150mg/日だった。エルロチニブによるざ瘡様皮疹、掻痒、皮膚乾燥といった皮膚障害は4名に認められた。Day8エルロチニブ血中濃度(平均値±標準偏差)は、服用4時間では差はなかったものの、服用直前の血中濃度は、皮膚障害発現患者では非発現患者に比べて約1.7倍高かった(皮膚障害発現群 : 673.3±103.1ng/ml、皮膚障害非発現群 : 423.3±121.4ng/mL)。一方CYP3A4, CYP3A5およびABCB1の遺伝子多型とエルロチニブの血中濃度および皮膚障害、内服継続期間との間には相関が認められなかった。 【結論】以上より、エルロチニブによる皮膚障害はエルロチニブのトラフ血中濃度と相関がある可能性が示唆された。施行症例数が少ないため、今後症例数を増やして引き続き実施する必要があると考えられた。
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