Nigella sativaの種はblack seedあるいはblack cuminとして知られ、アジア、中東、アフリカでアユルベーダ医学として治療目的に使われている。Thymoquinone(TQ)は、Nigella sativaの種の最も生理活性のある主要な精油成分である。 これまでの研究により、TQはアルツハイマー病に特異的なアミロイドβ(Aβ)により誘発される神経毒性や細胞毒性に対して海馬や大脳皮質の神経や人工多能性幹細胞由来神経を保護することが知られ、我々は、TQがオリゴマーAβによるSH-SY5Y細胞死を阻害しグルタミン酸誘発毒性に対してSH-SY5Y細胞を保護することを示した。Aβ_<1-42>線維形成に対するTQの阻害機構は未解明であり、そのメカニズムを明らかにすることを目的に研究を行った。 1. 蛍光色素チオフラビンT (ThT)を用いてTQのAβ_<1-42>凝集抑制作用を検討した。ThTは凝集したAβと結合すると蛍光を発する。TQ存在下・非存在下でAβ_<1-42>溶液の蛍光強度を比較した。0.05~3μMTQは蛍光強度を減少させAβ_<1-42>線維化に対して有意な阻害効果を示した。 2. Aβ_<1-42>ペプチドの10番目のチロシン(Tyr10)の蛍光強度を測定しAβ_<1-42>の局所環境について検討した。TQ存在下蛍光強度は顕著に減少しTQがAβ_<1-42>の局所環境を保護し線維形成しにくい状態にすることを示唆した。 3. 一分子蛍光分析システム(FCS)を用いてTQによるAβ_<1-42>凝集抑制作用を検討した。FCSは並進拡散時間を測定することにより蛍光物質の大きさを測定することが可能であり、Aβ_<1-42>の凝集が進むと分子が大きくなるため並進拡散時間は増加する。3μMTQはAβ_<1-42>の並進拡散時間を顕著に減少させAβ_<1-42>線維形成の初期段階を阻害することを示唆した。
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