研究課題
目的脳梗塞領域の虚血負荷がかかったペリサイト(虚血ペリサイト : iPC)は多能性幹細胞であり、その後、障害誘導性神経幹細胞(iNSPC)としての特性を獲得して神経再生機構に関与する。しかし、継代培養したiPCは神経への分化能に差があることが考えられる。本実験では、複数回継代培養した iPCと、そこから作製したNeurosphereの特性を検討し、安定した神経分化能を維持できる諸条件を決定することを目的とする。方法再現性の良いCB17マウスの脳梗塞モデル(J Exp Stroke Transl Med 2010 ; 3:28)を用い、脳梗塞組織からiPCを作製して5回継代培養を行い、(1)各継代細胞の増殖能や形態観察、(2)各継代細胞の神経マーカーやペリサイトマーカー、幹細胞関連マーカーなどの遺伝子発現、および(3)各継代細胞の神経分化能を、免疫染色やPCRで確認した。結果5継代すべての細胞において、iPCはペリサイトマーカーであるPDGFRβやNG2、α SMAとともに、神経幹細胞マーカーであるnest inを発現維持していることがPCRと免疫染色にて確認された。一方、神経細胞マーカーのTuj1は1-2継代目と比べ、3-5継代で発現が増加した。また成熟神経細胞マーカーであるMAP2は4継代目以降で新たな発現がみられることから、継代により自然に神経細胞への分化が進んでいることがわかった。また、継代ごとの細胞からニューロスフェアを作製して分化させると、1-2継代目のiPCからは神経細胞への分化が見られたがそれ以降のiPCは神経への分化が観察できなかった。考察iPCは5継代しても神経幹細胞マーカーを発現しているが、継代毎に少しずつ成熟神経細胞の形質を獲得し、反対に幹細胞としての分化能が低下することが示唆された。したがって、iPCを多能性幹細胞として安定して使用するには2継代までに使用するのが妥当であることがわかった。今後は、より神経への分化能を維持した状態で細胞継代できる条件を検討したいと考えている。
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