研究課題/領域番号 |
15H01681
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中尾 彰宏 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (60401238)
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研究分担者 |
杜 平 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任講師 (10462912)
山本 周 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任助教 (10590317)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SDN / Mobile Edge Computing / MVNO / モバイルネットワーク / プログラマブルネットワーク / Quality of Service / 機械学習 / アプリケーション同定 |
研究実績の概要 |
本研究提案は3つの研究課題を遂行する。 第一に、トラフィックから確実にアプリケーション・デバイスを特定しQoS制御を行う基盤技術の開発を実施した。特に、Android端末だけではなくWindows OSとiPhone/iPad(iOS)においてOS内にパケットマーキングを行う手法の設計と実装をした。大規模化のためスケールさせるためメニーコアプロセッサ内で、ソフトウェア的に、効率良く高速でフローの識別(Classification)を行う手法を開発した。 第二に、網内ネットワーク機能により資源の少ないモバイル端末利用を高度化する応用技術の開発を実施した。特に、特定のアプリケーションに対し、網内にて通信遮断を実行するセキュリティ機能を実装・評価した。 第三に、帯域利用を最適化する機械学習を用いた次世代MVNO帯域制御技術の開発を実施した。特に、アプリケーション毎の通信パターンの把握、オンライン機械学習による通信予測を実現する手法を開発した。オンライン機械学習には教師データの収集と学習済みのアルゴリズムの適用との両方を実行する必要がある。パケットマーキングを行う端末によりアプリケーションやデバイス情報とフロー情報のマッピングによる教師データの作成を行う。従来手法に比較して、常に新しい教師データが供給される点と時間ウィンドウ幅の小さいバッチ手法が特徴的である。また、アプリケーション同定の精度を高度化する機械学習アルゴリズムを新規開発した。 成果としてジャーナル論文1本、学会発表20件、うち国際学会13件(2件が基調講演、1件は2017年度の発表が確定) を達成している。また、最優秀論文賞の受賞や米国特許取得など、当初の計画にはなかった研究成果を達成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究提案は3つの研究課題を遂行したが、第一の、トラフィックから確実にアプリケーション・デバイスを特定しQoS制御を行う基盤技術の開発と第三の帯域利用を最適化する機械学習を用いた次世代MVNO帯域制御技術の開発において、特に顕著な進展があった。まず、基本方式であるパケットマーキングをTCP SYNのTrailer(パケットの最後)に付加してトラフィック解析を行う手法は、基本特許として、2015年に出願したものが、まず米国において特許取得完了した。 また、応用例としてITS、特に自動運転制御への適用や、上記基本方式を実現するスイッチの実装方式など、当初の計画にない具体的な応用例や実装例の研究が進展している。 このように、本研究提案の基礎となる米国特許取得や応用例・実装例として当初計画のなかった研究成果があるため、当初の計画以上に研究は進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も計画通りに3つの研究課題を遂行する。 第一に、トラフィックから確実にアプリケーション・デバイスを特定しQoS制御を行う基盤技術の開発を行う。実証実験を前年度までの研究室に閉じた形態ではなく、ユーザ参加型として広く開発した技術を社会展開する。各端末OSにマーキングを行う汎用的な設計と、端末でのパケットマーキングとFLARE上でQoSを実行するためのSBIを実用化に向けて設計する。 第二に、網内ネットワーク機能により資源の少ないモバイル端末利用を高度化する応用技術の開発を行う。網内セキュリティ高度化のネットワーク機能の一例として、マルウェアアプリケーションプロセスの網内検出・遮断を実装し評価する。マルウェアは、端末のOSから見ると一つのアプリケーションプロセスに過ぎないため、網内、つまりMVNO側でマルウェアの検出・遮断・警告が可能となる。網内にて(1) ホワイトリスト手法(予め、登録したアプリケーションのトラフィックのみを通過させる)と(2)ブラックリスト手法(予め、登録したアプリケーションのトラフィックに対して制限をかける)の2つの手法を実装し、それぞれの有効性の評価、および、2つを組み合わせる手法の有効性の評価を行う。また、最終年度として、集大成として、これまで開発した全てのネットワーク機能を収容するために、端末と網の連携の仕組みを一般化するフレームワークを設計する。 第三に、帯域利用を最適化する機械学習を用いた次世代MVNO帯域制御技術の開発を行う。最終年度では、バッチ処理の連続ではなく、オンラインにて機械学習を行い、データアーカイブへの通信データの蓄積を最小限に抑える手法の開発を行う。また、最終年度であるため、上記2つの課題と同様、計測データと解析をもとに実ネットワークにおける実証実験により本技術の有用性の評価・検証を行う。
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