研究課題/領域番号 |
15H01684
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
甲藤 二郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70318765)
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研究分担者 |
村瀬 勉 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 教授 (10530941)
金井 謙治 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (40732160)
嶋本 薫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80235639)
津田 俊隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80465377)
市野 将嗣 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (80548892)
亀山 渉 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90318858)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モバイルネットワーク |
研究実績の概要 |
本申請の研究開発項目として以下を設定している。基盤技術として、(1) 無線通信履歴の取得と無線信号マップの作成、(2) 無線通信履歴を活用した通信品質予測、(3) 品質予測に基づく適応配信制御と最適経路探索、拡張技術として、(4) システムの大規模化、セキュリティ確保、センサー活用、新無線技術対応、QoE評価、(5) アプリケーションの具体化とプロトタイプ実装。 基盤技術に関しては、まず(1)として、無線通信品質を収集するスマートフォンアプリを開発して大学周辺の無線信号マップを取得し、(3)として、スループットを最大化する経路探索を行い、MPEG-DASHを組合せた映像配信実験として、提案方式の有効性を確認した。また、(1)と(3)の組合せとして、複数人が同時に経路探索を行う場合の問題の定式化と相互作用に関する基礎検討を行った。また、(2)として、隠れマルコフモデル、ならびに線形予測分析を活用した無線通信品質の予測アルゴリズムに関する検討を行い、それぞれについて実測データに基づく性能評価を行い、有効性を確認した。(3)に関しては、スマートフォンの電力消費の計測結果に基づく消費電力モデルを作成し、映像データをバースト的に送信することで省電力化を図る映像配信技術に関する検討も行った。拡張技術に関しては、まず(4)として、商用クラウドを用いた評価実験システムの整備、マイコンボードを用いたセンサー活用環境の整備、スモールセルとマクロセルの組合せによる同時配信、人体計測機器を用いた映像品質評価などに関する検討を進めた。また、(5)として、無線LAN環境とLTE環境において、MPEG-DASHを用いた4K/8K映像配信実験を実施し、バッファ制御の影響に関する調査を行った。このほか、次世代ネットワークと映像配信に関する招待講演も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題はおおむね順調に進展している。(1) 無線通信履歴の取得と無線信号マップの作成は、スマートフォンアプリを開発し、大学付近における無線通信品質の収集を行っている。(2) 無線通信履歴を活用した通信品質予測は、機械学習と線形予測の二手法について、実用上は困らない推定精度が得られる目処を付けた。(3) 品質予測に基づく適応配信制御と最適経路探索に関しては、実機実験として、通信品質の向上に有効に機能する目処を付けた。 (4) システムの大規模化他については、初年度は主に環境整備に務め、二年目以降の本格活用の目処を付けた。(5) プロトタイプ実装に関しては、現状は映像データのプリエンコードを行ったり、4K/8K映像の表示は行わない通信実験に留めるなど、実時間性は実現できていないが、4K映像表示が可能なスマートフォンを手配するなど、最新の機器環境の整備を進めている。 事前に設定した研究開発課題において、ほぼ想定通り(課題によっては想定以上)の成果が得られているため、本年度前期の進捗によっては研究開発のスケジュールを早め、研究費の前倒し利用も活用しつつ、研究開発を加速することも検討している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 無線通信履歴の取得と無線信号マップの作成に関しては、スマートフォンアプリの開発・改良を進め、試験的な公開を目指す。特に、ユーザに不要なストレスを与えないように、インライン計測によって余分な電力消費を回避する無線通信品質内挿アルゴリズムの開発を進める。(2) 無線通信履歴を活用した通信品質予測に関しては、統計学における回帰分析や単位根検定、信号処理における線形予測分析、機械学習における隠れマルコフモデルや深層学習を組み合わせた品質予測アルゴリズムの検討を進める。また、位置やカレンダー情報(昼夜、平日・休日など)などの長期的な通信品質履歴も活用し、品質予測の高信頼化を図る。(3) 品質予測に基づく適応配信制御と最適経路探索に関しては、初年度に進めた実機実験の規模の拡大を図ると共に、複数変数下の最適化問題としての定式化を完了し、提案方式の解析的な評価も進める。 (4) 拡張技術に関しては、初年度に整備を進めた商用クラウドに加え、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアとして注目を集めるOpenStackを活用し、無線通信品質を効率的に収集・処理するための階層クラウドシステムの構築を進める。また、スマートフォンによって得られるセンサー情報を活用し、人間の行動分析や高信頼なドローン制御などへの拡張を図る。また、近年具体化が進む5G無線通信システムへの適用を想定し、階層的なセル環境におけるシステム設計の指針を与える。また、本提案方式によって得られる主観品質の評価実験を継続する。(5) アプリケーションの検討とプロトタイプ実装に関しては、Raspberry Piなどに代表されるIoTデバイスを用いた実験や、4K/8K映像配信、快適経路ナビゲーション、途切れないストリーミングの開発に着手する。また、複数のスマートフォンアプリを起動させ、リアルタイム無線混雑マップの可能性を探る。
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