研究課題/領域番号 |
15H01691
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
皆川 泰代 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 教授 (90521732)
|
研究分担者 |
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
太田 真理子 日本女子大学, 人間社会学部, 助教 (50599412)
山本 淳一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (60202389)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 発達障がい / 脳機能結合 / 母子愛着 / 予期因子 / NIRS / 言語獲得 / リスク児 / 社会認知 |
研究実績の概要 |
本研究は発達初期の言語、社会認知機能を支える脳機能・脳部位結合の発達過程とその障害例を明らかにし、発達障害を予期するバイオマーカを見出すことを目的としている。この目的のために兄弟に発達障害を持つ乳児、早期産児の発達障害のリスクの高いリスク児群と定型発達児群について3歳まで縦断的に言語、社会認知機能の行動実験、脳機能実験を行い、発達初期の行動や脳機能データと後の発達の関係を明らかにする。2年目に入った昨年度は、初年度に開始したリスク児と定型発達児コホートの縦断研究を引き続き定期的に行うと同時に,新しい参加者を募るために昨年とは異なる手法でリクルート活動を行った。まず縦断研究では様々な質問紙調査、発達検査、アイカメラ実験、NIRSによる脳機能計測が含まれておりこれらのデータを蓄積している。これら各々の実験項目についての定型発達児群を対象とした結果は,人数が集まり次第,解析の上,適宜学会報告や論文発表を行っている。例えば共同注意のライブ刺激呈示時の眼球運動についての検討では,従来のモニターを通した刺激呈示の場合とは乳幼児の眼球運動は異なることなどが明らかになっている。また乳幼児の微細運動の研究項目からは,その発達が12ヶ月から18ヶ月の間に急速に発達することなどが示された。脳機能解析についてもICAやWavelet coherenceなどを取り入れた脳機能結合の解析を行った。縦断研究データはまだ1年目では対象児も充分育っていないため,来年度,再来年度も引き続きデータの収集に努める。続いて新規参加者(リスク児)のリクルートについては自治体,NPOや周産期関連の病院へチラシ配布,子育て支援会の開催などを通して行ってきた。現在妊娠中の方を含め,来年度研究への参加予約を頂くことができた。来年度も新規参加児を含め,3ヶ月おきの縦断計測を確実に行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リスク児すなわち発達障害児の同胞である乳児の研究参加は,昨年度は10名程度であったが,今年度はやや少ないが同様な新規参加者が得られた。これらリスク児と定型発達児(約20名)について質問紙調査、発達検査、アイカメラ実験、NIRSによる脳機能計測による縦断研究を進めてきた。そして別途病院で計測をしている新生児も安静状態の脳機能結合や音声に対する脳機能計測を行ってきており、順調に実験が遂行されていると言える。また今年はとりたてて脳機能実験の解析法の工夫に力を入れた。これら新しい解析法を用い,縦断研究の3ヶ月時の項目である母子の同時計測について定型発達児を対象としたデータの予備的結果をまとめ,母と子の2者間の相互作用に関与する2者間の脳内結合が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は4年かけて0歳から3歳までの縦断研究を継続的に実施するが、各年度にもそれぞれ0歳児の参加者を加えつつサンプル数を増やしていく。昨年に引き続く縦断研究をドロップアウトがないように着実に行うと同時に、今年新規参加する乳児をより増やした上で、縦断研究総数を増加させることを目標としている。ある程度蓄積されたデータは適宜解析する。縦断結果ばかりでなく横断的な観点からも解析を行い、リスク児と定型発達児の決まった月齢での比較によりその差異を明らかにする。 上記の中でも今年度は特に,これまで取得したビデオ行動データ解析とコミュニケーションテストの採点に力を入れて,社会的行動の指標とその他の眼球運動や脳機能活動および言語発達得点との関係を明らかにする予定である。 昨年度,解析手法に工夫を試みた安静状態の脳機能結合および母子間の脳機能結合について引き続き横断的データを追加して,まとめ論文執筆を行う。 6ヶ月や9ヶ月ではある程度,リスク児群と定型発達児群のデータが蓄積されてきたので,適宜横断的な観点から両群を比較し脳機能や社会的行動について違いを明らかにする。
|