研究実績の概要 |
昨年提案した,人の手指などの細やかな動きを計測するためのLC 共振原理を利用した無線磁気式3次元トラッキングシステムでは,1つのLCコイル・マーカでも高精度かつ高速なリアルタイムトラッキングが可能であるが, ①計測死角問題と②5自由度のみで回転の残り1自由度が測定できないという問題があったため,3個のLCコイルを一つのマーカに組み込み, 互いのLCコイルの死角や計測情報を補完し合う形で利用した. そうすると,マーカの全ての向きの回転に対して常時一つ以上のコイルが励磁され利用可能になり, 計測死角の問題の解消が図られると同時に,2つのLCコイルにおける5自由度の情報から,6自由度の情報を計算することができる. 本年は,最適なマーカ形状を見出すための実験的考察を行った.マーカは,3つのLCコイルと,それらを格納可能な3Dプリンタで製作した治具からなる. 各LCコイルは小さいため,3つ組み合わせたマーカであっても小型かつ軽量である.いくつか設計した中で最も大型のマーカ(キューブ型)でも体積は4cm3程度で,重量も約10gに抑えられている. そのためユーザは,このマーカを手指に装着したとしても,細かで自然な動作を行うことができる. 3つのLC コイルを組み合わせて利用するが,これらを必ずしも互いに垂直に配置する必要はなく, LCコイルのレイアウトは自在である.そこで,3Dプリンタを用いて計測死角を解決することと安定性を確保することを考慮し,いくつかの形状のマーカを試作し,性能評価を行った.計測死角問題について考える際に重要な点が, LCコイルから発せられる磁場の強度であるため,各回転方向におけるLCコイルの磁場強度の変化を観察する実験を実施し,最も死角が小さくなるマーカのデザインを見出した.
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