研究課題/領域番号 |
15H01698
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
桑原 教彰 京都工芸繊維大学, 総合教育センター, 教授 (60395168)
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研究分担者 |
三輪 洋靖 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (30367073)
渡辺 健太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10635808)
太田 順 東京大学, 人工物工学研究センター, 教授 (50233127)
山下 淳 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30334957)
米澤 朋子 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (90395161)
山添 大丈 立命館大学, 情報理工学部, 任期制講師 (70418523)
杉原 太郎 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50401948)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知症介護 / コミュニケーションロボット / 移動ロボット / 人物トラッキング / コト・データベース |
研究実績の概要 |
グループホーム入居の認知症者に対する介入手法として、認知症ケアとしてのレクリエーションのデザインの方法論を検討し、非日常の演出による情動の記憶への働きかけが極めて有用であることを明らかにした。その中でのICT技術の活用としてロボットやチャットボットの活用において、セラピーにボットを導入する際にどのような性格のボットがいいかを検討した。更に、ユマニユードの可能性も検討した。さらにアウトカム評価としての表情認識技術の有用性を明らかにした。 ぬいぐるみロボットとの触覚インタラクションを実現するため、ぬいぐるみロボットによる触覚センシング手法とロボットからの触覚表現の研究を進めた。センシング手法ではぬいぐるみロボットに搭載された触覚センサを用い、ぬいぐるみを触っているユーザの内部状態を推定する手法を提案した。触覚表現については呼吸や汗などの生理的現象を模擬することによるロボットの内部状態表出手法と、牽引やなでるなどの直接的な触覚表現を実現するための機構を提案した。ロボットの生物感提示に関わる研究と、エージェントの存在感を用いたユーザ行動誘発へ向けた試みも展開した。 浮揚ガスを充填した小型飛行船を用いることで室内を移動する人間をトラッキングするシステムを提案した。また複数の魚眼カメラを用い、人間と飛行船の位置を測定する。浮揚ガスによりプロペラを動かさずにホバリングができ、電池消費及びプロペラの騒音を減らすことができ、かつ安全な人間トラッキングを実現した。 グループホームの入居者に関する職員の気づきを入力するためのシステムDANCEの導入効果を定量化するため、職員の業務のタイムスタディを実施し、システム導入前の業務・情報共有の状況を分析した。また、レクリエーションの効果測定に用いるカメラシステムとコト・データベースの連携部分の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グループホームでの認知症者への介入方法を定式化することができた。これにより認知症ケアのPDCAサイクルのP、すなわち計画を介護スタッフの経験のみに頼ることなく、効果をある程度予測して出来るようになった。またそこにICTの活用、すなわちコミュニケーションロボットやチャットボットの活用の有用性も検証した。さらにC、評価において表情検出が有用であることも示した。 また記録技術として、ぬいぐるみロボットにより認知症者の無意識の動作からの情動抽出、あるいは生体情報の検出技術を確立した。また認知症者の表情をグループホーム内のオープンスペースのどこでも認識可能にするため、小型飛行船と360度カメラを組み合わせた人物トラッキング技術を確立した。 さらに記録技術として、各種ロボットなどから収集される認知症者の映像データや情動データ、そして介護スタッフの記録を統合的にデータベース化するための、コト・データベースのインタフェースを設計・実装した。 グループホームへのコト・データベースの導入がやや遅れてはいるが、必要な要素技術はほぼ開発が終了していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
グループホームでの認知症ケアとしての介護レクリエーションの場面を対象とし、PDCAサイクルのうち28年度の成果に基づくP:計画、D:実施の際、ぬいぐるみロボットや移動ロボットによる人物トラッキングによるレクリエーション中の認知症者の映像データや情動データの収集を実施する。このデータをコト・データベースの各種分析機能で分析を行い、C:評価、すなわちPやDの客観的な評価を行い、介護スタッフや家族と共有する実証評価を実施する。分析においてはPやDが妥当であれば、それがなぜ成功したのか、また妥当でない場合には何故それが上手くいかなかったのかを、高次推論機能を用いて可視化することを実施する。これによりA:アクション、すなわち次回のレクリエーションに向けての改善点を示し、結果としてレクリエーションの質が向上することを示す。
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