研究分担者 |
庭野 匡思 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (10515026)
青木 輝夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30354492)
的場 澄人 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30391163)
中村 一樹 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究部門, 主任研究員 (50725231)
石元 裕史 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 室長 (70281136)
本吉 弘岐 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究部門, 主任研究員 (70571462)
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研究実績の概要 |
熱光学法カーボン分析装置による積雪中のダスト, 元素状炭素, 有機炭素濃度を札幌, 長岡, 新庄で昨冬に引き続き全冬期間測定するとともに, 新たに野外における積雪の近赤外域の反射率から, 積雪粒径を求めるための小型可搬型の近赤外域反射率積雪粒径測定装置を開発した. また濡れ雪の積雪粒径の測定手法に関しては, ガス吸着法を用いた測定を試みるとともに, 偏光分光情報を用いた濡れ雪の積雪粒径測定手法の開発にも着手した. 積雪変質モデルSMAPの精度検証のために, 新潟県内の気象庁アメダスにおいて積雪深の再現実験を実施し, 各地点における積雪深を十分な精度で再現することを確認した. なおモデルの計算には雨雪判別が重要なことが分かったため, 国内22官署のアメダスデータを解析し, 地上の気温と湿度から降水の雨雪判別を行う実用的な経験式を構築した. またグリーンランドの裸氷域におけるアルベド計算に重要であるクリオコナイトホールのDEM作製のための画像解析手法の開発に着手した. 現実の積雪粒子についての形状とその光散乱特性を調べるため, X線マイクロCTの積雪の3次元データを基にした粒子形状解析を行い, 幾何光学近似法での計算によって現実粒子の散乱特性計算を試みた. さらに近年のグリーンランドにおける積雪域のアルベド低下の原因として考えられる積雪粒径を, 本研究で高度化したVoronoi凝集積雪粒子形状モデルを用いて, 2000年から2016年のMODISデータから抽出し, 7月に有意な増加トレンドを示していることが分かった. 昨年に引き続き, 札幌, 新庄, 長岡において気象観測並びに積雪断面観測を実施するとともに, 円滑なデータ活用にむけて, 過去データも含めて共通のデータフォーマット化を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高精度積雪物理量測定技術の開発に関しては, 比較実験を通じて既存の積雪粒径測定手法の信頼性が一段と向上したのに加え, 小型可搬型の近赤外域反射率積雪粒径測定装置の開発が順調に進んでいる. 積雪物理プロセスモデルの精緻化に関しては, 積雪変質モデルSMAPの精度検証を通じて, 雨雪判別技術の開発において進展があり, モデルの高度化が順調に進んでいる. 光散乱粒子モデルの開発に関しては, 積雪のX線マイクロCTの3次元データより光散乱特性を幾何光学近似法で計算を行う手法を開発し, 現在用いられている積雪粒子形状モデルとの比較を行なうとともに, それらの手法を基にした衛星リモートセンシングアルゴリズム開発を用いて精度の高い積雪粒径抽出結果が得られた. 定点観測に関しては, 高品質な気象・雪氷観測データが順調に取得されてきているに加え, 過去データを含めて統一フォーマット化が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
積雪不純物濃度の高精度測定技術の開発では,積雪サンプルをろ過フィルター上に補足しその分光透過率から濃度を決定するフィルター透過率法による濃度測定に取り組む.また冬期の雪氷防災研究センター露場の1週間毎の積雪断面観測と合わせて表面近傍の積雪試料のサンプリングを行い, これにより得られる積雪中の不溶性エーロゾル不純物濃度と大気エーロゾルの関係を明らかにするとともに, 液中パーティクルカウンターを用いた積雪中の不溶性微粒子の粒径分布測定方法を確立する. 積雪粒径の高精度測定技術の開発に関しては, 近赤外域反射率積雪粒径測定装置の改良を施す. さらに積雪の含水率測定を簡便に行う為の手法として, 誘電式の土壌水分計の利用を検討する. 積雪物理プロセスモデルの精緻化に関しては, 積雪アルベド物理モデル内の対応できる積雪粒径の範囲を裸氷上の氷粒子サイズまで拡張する. また融雪期における不溶性微粒子の挙動を明らかにし, 積雪変質モデルへ導入するための準備をする. さらに降雪の比表面積と降雪粒子の連続画像測定と合わせた観測を行い, 降雪種や降雪種別の粒径のモデル化を進める. 光散乱粒子モデルの開発に関しては, 積雪のX線マイクロCTデータ解析を継続し変質過程と粒子形状・粒径分布との関係についての実用的なモデルを構築する. またH28年度に行ったグリーンランドにおける積雪域のアルベド低下の原因に関する解析を裸氷上の氷粒子サイズまで拡張し, 裸氷域も対象とする. 定点観測に関しては, 札幌と長岡における積雪汚染の起源が国内か大陸かという点を明らかにするための観測的研究に本格的に着手する. 近年の気候変動に伴う積雪粒径変化や積雪汚染が実際にどの程度起きているのか, について観測データを精査することにより明らかにする.
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