研究課題
1.日本人分類不能FA症例9例のサンプル解析を実施している。分類不能FA症例9例は、様々な努力によっても既知のFA原因遺伝子の変異による発症が確定出来なかった症例である。RNAシーケンス、全ゲノムシーケンス、エクソーム解析結果の見なおし等を行い、これらの症例の多くで、実はこれまで見逃されていたシノニマス変異によるスプライス異常によって既知のFA遺伝子に異常が生じていることが判明した。しかし、二例の兄弟例で、新規のDNA損傷応答関連遺伝子に両アレル変異を見出した。今後の解析が重要である。2.インド人FA患者サンプルの解析による新規FA遺伝子ハンティングを継続している。二国間交流事業によってインド、ムンバイからのサンプルを解析した。まだ例数は少ないが、インドやパキスタンといった地域でのFA症例に、特異なFANCL遺伝子変異が多発することを見出した(おそらく症例の20%程度に登ると考えられる)。この変異自体は、以前に一例のみ報告されているが、他の民族地域でのFANCL変異は非常に稀であり、民族的特殊性を示すと考えられる。3.同定された新規FA蛋白質機能の詳細な解析を目指し、ゼブラフィッシュFAモデルの作成と解析を行っている。UBE2T, FANCD2, FANCLのノックアウトゼブラフィッシュの作成を試み、前二者については作成できた。FANCLについては、すでに報告された変異体を入手した。UBE2Tについては、生まれる魚の全てがオス化するという結果となり、さらに早老症を思わせる早期死亡を認めている。研究分担者の佐藤博士(早稲田大学胡桃坂研究室)によってFANCD2とRAD51(FANCR)の会合とその機能的関連を解析し、論文発表した(NAR 2016 Dec 15;44(22):10758-10771)。
2: おおむね順調に進展している
インド人患者の解析は解析済みの例数としては、目標からいって遅れているが日本人患者の解析は順調に推移し、新規遺伝子候補の同定に至った。論文も出ており、ゼブラフィッシュの解析では、新たな表現型が同定された可能性がある。
他のプロジェクトで進めているヒトiPS細胞インビトロ造血分化系の利用によって、マウスやゼブラとは違う次元でヒトのFA遺伝子異常の機能検索が可能になってきた。この系にゲノム編集技術を組み合わせ、より広範に応用することを考えている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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巻: ー ページ: ー
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