研究課題/領域番号 |
15H01743
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 昌志 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10281073)
|
研究分担者 |
加藤 正史 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362317)
大神 信孝 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80424919)
矢嶋 伊知朗 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80469022)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 騒音 / 内耳 / 平衡機能 |
研究実績の概要 |
【背景】世界的に見ても低周波騒音の健康リスクは、ほとんど不明である。我が国においても状況は同じで、環境基準値もないのが現状である。代表者等は、先行研究において、日常生活で曝露されうるレベルの低周波騒音が、成獣野生型マウスの平衡機能障害を誘発する可能性を示した。 【目的】本研究において、より正確に100 Hzの低周波騒音を純音で曝露できる装置を作製した。さらに、幼生期マウスを用いた動物実験にて、100 Hzの低周波騒音に対する健康影響を音量(dB)別に調べた。以上により、幼生期マウスにおける低周波騒音曝露の健康影響の解明をめざした。 【研究成果】1) 幼生期マウスに50-70 dBの低周波騒音(100 Hz)を4ヶ月曝露し、ローターロッドや平均台歩行試験等を用いて、平衡機能を調べた。50 dBおよび60dBでは平衡機能にほとんど影響を与えなかったが、70 dBでは、有意にローターロッドや平均台歩行試験の成績(平衡機能)が低下した。さらに、平衡機能障害は数ヶ月経過しても回復しなかったので、本健康障害は不可逆的である可能性が高い。さらに、幼生期に70 dB・100 Hzの低周波騒音を4ヶ月曝露されたマウスにおける内耳前庭にある球形嚢および卵形嚢に形態学的障害が認められた。以上の結果は、幼生期に曝露された低周波騒音により、内耳前庭の球形嚢および卵形嚢が障害を受け、不可逆的な平衡機能障害が誘発される可能性があることを示している。さらに、50 dBおよび60dBの曝露では平衡機能に影響をほとんど与えなかったものの、70 dBで有意に平衡機能が障害されたことは、70 dBが低周波騒音により誘発される平衡機能障害の閾値になる可能性を示している。以上のように、本研究では、低周波騒音の幼生期曝露に関して、環境基準値の策定に有効な基礎データを提案した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、当初の予定通り、幼生期における低周波騒音の亜急性曝露の健康影響を解明するとともに、環境基準値の基礎データとなりうる成果を、動物(マウス)を用いて、世界で初めて提案した。ゆえに、おおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画通り、種々の周波数(Hz)の低周波騒音を純音で出力できる音刺激装置の改良を進める。さらに、低周波騒音曝露の健康影響について、内耳における作用部位と作用機構を、より詳細に検討し、健康障害のメカニズムを解明する。さらに、医工連携研究により低周波騒音自体(環境)からのストレスを緩和できる技術の開発を進める。
|