研究課題/領域番号 |
15H01745
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
野村 俊之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00285305)
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研究分担者 |
谷 修治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (80405357)
徳本 勇人 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70405348)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キャリア粒子 / DDS / 植物 / イメージング |
研究実績の概要 |
食料の安定供給は、人類繁栄のための喫緊の課題である。本研究では、機能性成分を封入したキャリア粒子を創製し、植物や植物病原菌に対して種・部位特異的に薬物を導入するデリバリーシステムを『工学』と『農学』の異分野融合により開発することを目的とする。平成28年度の研究では、薬物送達用キャリア粒子として疎水性薬物の封入に適したPLGA(乳酸・グリコール酸共重合体)をキャリア粒子として、1)動植物細胞へのキャリア粒子導入の対比、2)農薬封入キャリア粒子を用いた植物病原菌の防除、について主に検討を行い、以下の結論を得た。 1)植物細胞よりもキャリア粒子の導入に関する研究が進んでいる動物細胞との対比を試みた。液滴法により、PLGA粒子と動植物細胞に対する極性の異なる溶媒の接触角を測定し、Young-Dupreの式から表面張力を算出した。得られた値に基づき、PLGA粒子が細胞に付着したときの表面自由エネルギー変化量を推算すると、動植物細胞ともに負の値となることが分かった。これより、PLGA粒子と細胞は共に負帯電であるにも関わらず付着安定性が高いため、細胞壁の有無に関わらずキャリア粒子が生きた細胞内に取込まれたものと推察される。 2)前年度は、卵菌類に属するジャガイモ疫病菌P. infestansの薬物封入キャリア粒子を用いた感染予防を検討した。本年度は、真菌類に属する糸状菌のウリ炭疽病菌C. orbiculareについて検討した。その結果、C. orbiculareの付着器のメラニン化を阻害する農薬ピロキロンを封入したPLGAキャリア粒子を用いると、PLGA粒子が選択的に胞子に取り込まれ、細胞内部で分解されて封入農薬が放出されるため、PLGAに封入せずに農薬をそのまま散布した場合と比べて、メラニン化の阻害効果が向上することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
負帯電のPLGAキャリア粒子を植物細胞に導入できる要因を熱力学的に明らかにした。また、薬物を封入したPLGA粒子を用いて、卵菌類だけでなく真菌類に属する植物病原菌の感染も予防できることも明らかにした。以上より、本研究は、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1)遺伝子を封入したキャリア粒子を調製し、細胞壁を備えた酵母の欠損株をモデル細胞として遺伝子導入を検討する。 2)酵母細胞で明らかにした遺伝子導入効率の良い操作条件で、植物細胞への遺伝子導入を試みる。 3)ラボスケールの土壌栽培システムを用いて、薬物封入キャリア粒子の実証試験を行う。
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