研究課題
1. サプライチェーンの社会価値の分析:消費者の視点からサプライチェーンの社会価値を分析するために,様々な製品の選択・購入の際に重視している属性(原料調達やサプライチェーンの環境影響を含む)について,全国の一般消費者5,600人を対象としてオンラインアンケート調査を実施した。2. 輸入資源の国際サプライチェーン分析:リスク要因を広範に把握するために,環境・社会・経済・地政・技術の分類による枠組みを提示した。ニッケルの採掘・製錬段階における供給障害の事例を抽出し,リスク要因の一つとして各国の採掘に伴う土地改変量を推計して,ニッケルの資源利用の持続可能性を高める方策を検討した。3. 産業廃棄物のホットスポットの地域間分析:前年度に実施した需要・供給と産業廃棄物発生量の地域間分析の精度を高めるため,産業廃棄物発生量の国家統計が根拠としている各都道府県の調査結果を入手し,地域別・産業別の発生原単位を算定した。4. 地域における再生可能エネルギー供給システムの分析:種子島を事例として,農林業から発生する未利用資源,再生可能資源の供給速度を調査するとともに,これらを有効利用することにより得られるサプライチェーン全体への波及効果に関する基礎データを収集,整備した。5. サプライチェーンの地震リスクの分析:全国の事業所の住所データ(約22万件)を経緯度に変換し,震度ごとの発生確率(30年)および南海トラフ巨大地震の予測震度のメッシュデータと対応させることで,約1,500品目について地震リスク指標を算定した。6. ホットスポット分析のソフトウェア設計:前年度に作成したプロトタイプに,ストレス要因となる原料から波及的に影響を受ける製品を特定し,その経路をサンキー図によって可視化する機能を付加することで,製品とストレス要因(原料)の関係を双方向で分析できるソフトウェアにアップグレードした。
2: おおむね順調に進展している
1. ストレス要因の指標開発:対象とする評価領域の選定および指標開発は,当初の研究実施計画では初年度に完了させる予定であったが,研究分担者間の議論の結果,事例分析を通した個別具体的な検討を先行させることとしたため,次年度に実施することとした。2. 社会価値の指標開発:前年度に実施したサプライチェーンの社会価値についてのレビューと議論をベースとして,一般消費者を対象とした大規模なオンラインアンケートを実施することで,消費者の視点からサプライチェーンの社会価値について調査することができた。社会価値の指標化に向けた基礎データの取得という意味で,十分な進捗があったと言える。3. 事例分析:概念的なストレス要因の定義・指標開発に先行して,個別具体的な事例分析を進めている。国内ストレスおよび国外ストレスの事例分析(産業廃棄物の地域間分析,輸入資源の国際サプライチェーン分析)は,当初の予定よりも前倒しで進行している。地域における再生可能エネルギー供給システムについても,現地調査によるデータの入手などの基礎的な準備とサプライチェーン構造の分析が進んでいる。さらに,地震リスク指標の開発と算定は予定よりも早く進んでおり,事例分析も全般的に十分な進捗があったと言える。4. ソフトウェア実装:当初の予定では,ソフトウェアの実装は最終年度に計画されていたが,研究グループ内で実用性や発展性を高めるための議論を進めるために,本年度までにソフトウェアの基本設計およびプロトタイプの作成,さらに製品と原料の双方向の分析へのアップグレードを完了させた。
1. 社会価値の指標開発:本年度に実施した意識調査の分析結果をもとに,選好評価のアンケート調査を設計・実施することで,国内外における生産や原料調達,環境影響といったサプライチェーンの属性が持つ社会価値を指標化し,項目間のトレードオフ関係も含めて分析する。2. 事例分析:本年度までに分析を進めた事例について,以下の方針で分析を進める。事例分析の結果は,社会価値の指標開発およびソフトウェア実装にフィードバックする。A) 輸入資源の国際サプライチェーン分析:輸入資源(ニッケルおよび黄リン)のサプライチェーンに内在する多様なリスク要因を対象として,本年度までに収集した事例情報とリスク要因の分析結果をもとに,モデル解析や代理指標の活用の可能性を検討する。B) 産業廃棄物の地域間分析:本年度までに実施した誘因-発生の地域間分析に引き続いて,産業廃棄物の広域移動量の統計を用いて,発生-処分の地域間分析を進める。C) 地域における再生可能エネルギー供給システムの分析:未利用資源や再生可能資源をエネルギーキャリアなどに変換することで,どのような社会価値が産み出されるか分析する。また,地域のケーススタディとして種子島を対象とし,農林工横断で資源を利用することで産み出される社会価値のダイナミクスを解析する。D) サプライチェーンの地震リスクの分析:本年度に算定した品目ごとの地震リスク指標をもとに,リスクの高い原料がサプライチェーンを通して影響を与える製品を特定し,南海トラフ巨大地震を含む地震リスクに対してホットスポットとなる製品・原料を明らかにする。3. ソフトウェア実装:本年度までに作成・更新したプロトタイプを,上記の事例分析に適用することを通して,実用性や発展性を高めるなどソフトウェアの改善版を作成し,研究グループ外の実務者などに試行してもらうことで,ソフトウェアの完成および公開を目指す。
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