研究課題/領域番号 |
15H01753
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
渡辺 一哉 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40393467)
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研究分担者 |
阿部 貴志 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30390628)
上野 嘉之 鹿島建設株式会社(技術研究所), その他部局等, 研究員 (60416724)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 嫌気消化 / 電気共生 / 発電菌 / 電気合成菌 / メタン菌 / 活性炭 |
研究実績の概要 |
導電性物質の添加により微生物間の還元力のやりとり(電気共生)を促進し、メタン発酵を高効率化する検討を行っている。今までに、活性炭微粒子や酸化鉄微粒子を添加する検討を行い、ある特定の種の活性炭を添加することでメタン発酵が促進されることを発見した。そこで、その中で増殖している微生物を特定するために、次世代シーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子増幅産物配列解析を行い、促進サンプルにおいて電気化学活性をもつGeobacterやメタン菌のMethanosarcinaが増加することが確認された。 また一方で、別の炭素微粒子をメタン発酵系に添加するとメタン発酵が抑制される現象が見いだされた。そこでこの系の詳細な解析を行い、この系には酢酸が蓄積すること、この炭素微粒子がメタン菌を特異的に抑制することを発見した。次世代シーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子増幅産物配列解析においては、電気化学活性を持つことが知られているClostridium属細菌の近縁種が優占的に検出された。さらに、メタン菌および発酵細菌の純粋培養へこの炭素微粒子を添加する実験では、メタン菌のみの増殖が阻害されることが示され、メタン菌特異的な阻害効果が確認された。これは新たなメタン菌抑制法として注目される。この炭素微粒子によるメタン菌阻害の作用機序は検討中であるが、細胞膜に損傷を与えて増殖を抑制する可能性が考えられる。これは、各種蛍光色素で細胞を染色することにより示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画の研究は予定通り進行しているが、今年度はそれに加えて導電性炭素微粒子について予想外の効果を見出した。これは、今後メタン菌抑制法として各種産業で利用されるようになると考えられる重要な発見である。
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今後の研究の推進方策 |
電気共生に関与する微生物の解析を継続し、メタン発酵が促進された系においては、メタゲノム/メタトランスクリプトーム解析によりメタン発酵の促進に関与すると同定された微生物種がもつ代謝系および電子伝達系遺伝子を同定する。また、それらがもつ代謝系や電子伝達系遺伝子の発現変動に関する知見をメタトランスクリプトーム解析の結果から得る。さらに、これらの遺伝子が発現上昇する条件を見つけ出すことにより、電気共生によるメタン発酵の促進技術の基盤を確立する。
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