研究課題/領域番号 |
15H01757
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
森 裕之 立命館大学, 政策科学部, 教授 (40253330)
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研究分担者 |
小幡 範雄 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70224300)
平岡 和久 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70259654)
石原 一彦 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80388082)
吉村 良一 立命館大学, 法務研究科, 教授 (40131312)
杉本 通百則 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (40454508)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境マネジメント / アスベスト災害 / 国際関係 / 公共政策 |
研究実績の概要 |
本年度はアスベスト産出国・使用国や現状の被害補償・救済や予防対策について、各国の事例調査・研究を順次行った。 アスベスト産出国について、それぞれの国内の政治・社会・経済状態や国際関係の要素を中心に対比的に調査研究を進めた。過去の産出国事例として森裕之論文「カナダのアスベスト問題と国際関係」、現在の産出国事例として南慎二郎論文「世界のアスベスト産業の中核としてのロシアの実態」「ロシアのアスベスト産業の実態・特徴と地域経済を巡る課題」として実態解明と今後の政策対応についての検証を行った。 アスベスト使用国について、現状で消費量の多い主要国の中で特に使用と規制がせめぎ合っているタイの調査研究を実施した。それをまとめたのが石原一彦論文「タイにおけるアスベスト規制の現状と課題」である。 アスベスト被害の補償・救済を巡って、森裕之論文「アメリカのアスベスト問題 訴訟社会における複合型ストック災害」にて、政策ではなく民事訴訟を中心とした被害補償が定着化している社会の実態についての検討を行った。民事訴訟中心での補償では訴訟件数の膨大化と賠償金額の肥大化が進行して、司法機能の阻害や仲介の弁護士費用の増大といった不効率が発生する。これは低水準の救済制度のため訴訟が誘発されている日本の状況に対しての教訓ともいえる。日本の救済補償制度の現状については南慎二郎報告「社会保障制度としての石綿健康被害救済制度の検討」にて整理・検討を進めた。 アスベスト災害の予防について、世界でも先進的な対策を実施しているイギリスについて杉本通百則論文「イギリスにおけるアスベスト管理規制の特質」にて検討を行った。イギリスではアスベスト取扱(除去や廃棄処分)業者に厳格なライセンス制度の導入等により適切なアスベスト処理と防じん対策の実施が社会の常識となっており、日本を含む他国にとって示唆に富むものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績で記した通り、アスベスト産出国・使用国の実態調査と日本ならびに世界のアスベスト対策についての解明・検討を進めてきており、国際ネットワークについてもアメリカ合衆国ニューヨーク州内の医学者・大学研究機関をはじめとしてイギリス、オランダ、タイといった各研究メンバーの調査訪問先での交流によって拡充を進めてきている。 具体的にはアメリカ合衆国においてはマウントサイナイ医科大学の関係者、コーネル大学東アジアプログラム・法科大学院、ニューヨーク州立大学バッファロー校・オルバニー校等、イギリスにおいては労働衛生関連の規制当局の中核である労働安全衛生研究所(HSL)や各地の被害者支援団体、オランダにおいては「ヨーロッパ・アスベスト・フォーラム」にて主に欧州地域からの研究者や専門家らとの交流(石原一彦「ヨーロッパ・アスベスト・フォーラム報告-日本の石綿総合対策研究会との比較-」)、タイにおいてはチュラロンコン大学社会研究所などが挙げられ、研究ネットワークの国際的な展開は確実に進んでいる。 その一方で主要メンバーでのグループ調査活動として予定していた国際機関(ILO、WHO)および旧産出国(イタリア)の欧州調査の実施調整が難しくなり次年度に繰り越すことになった。ただし、その分を各個の調査成果のとりまとめと成果発信に注力しており、研究計画の遂行上に特に影響はないといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究課題の最終年度となるので、計画的な調査遂行と国際会議プログラムの実施により、総括的な研究成果へと確実につなげていく。そのため、夏季休暇期間に欧州でのグループ調査を実施した上で、年度末にはこれまでの構築・拡充してきた研究成果とネットワークをベースとしての国際会議を行う。 特に国際会議を実行することで、研究活動の実施主体である本研究メンバーの研究成果の整理・とりまとめとその内容のより深い探求を推進することができる。さらに国内外からの研究者・専門家を招聘して研究報告をしてもらうことで、国内外の研究成果・知見について一貫性をもって網羅的に取り扱うことになる。全体での討論を進めていく中で、より包括的なアスベスト災害の実態解明、ならびに一般性を有するアスベスト対策の追求へと結実することになる。このような形でより実効性の高い政策研究へとつながることが期待できるため、国際会議の実行を軸にすることで総合的・総括的な研究成果へと推進していく。
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